2005.6 無料公開記事  ▲TOP PAGE

ネット販売は"空中戦"
武政良治●エディオンダイレクト事業部長(暮らしのデザイン)

 中部・関西地方を主な営業圏とする家電量販店グループ「エディオン」は、5月5日からグループショッピングサイト「エディオンダイレクト」を立ち上げた。家具・インテリアを扱うグループの「暮らしのデザイン」内に新しく事業部門を開き、ウェブとカタログ、テレビなどメディアミックス展開につなげる考えだ。

 エディオンダイレクト事業部長に就任した武政良治氏は、グループの「デオデオ」で25年にわたり店舗営業やバイヤーを務めた"家電のプロ"。エリアという店舗商圏での戦いと比較してネット販売や通販を"空中戦"と呼び、「境界線および天井が存在しない」という可能性に期待する。(聞き手は本誌・渡辺友絵)

グループ4社の顧客と商品力を集結したサイトを構築
分母拡大で会員45万人へ

――いよいよグループ力を集約させたショッピングサイトがスタートしましたが、立ち上がり状況はどうですか。

 昨年11月にまずエイデンとデオデオのサイトを統合し、今回はカタログ通販の暮らしのデザインと4月にグループ入りしたミドリ電化を一緒にしたわけです。11月時点と異なりシステム自体をすっかり刷新したため、トレーニングはしていたものの思った以上に負荷がかかり、お客様にはご迷惑をかけてしまいました。それだけ多くの方がアクセスして下さったということですが。

――ヤフーや楽天にも出店していますが、自社サイトを訪問するユーザーと購買行動に違いがあるのでしょうか。

 ショッピングサイトの場合は買い物目的のため、アクセス数に対する購入率が高いことが特徴です。ただあくまでも商品軸で選ぶことから、1点購入が目立ちます。

 一方、自社サイトはグループのリアル店舗や暮らしのデザインというブランドを認知している方が多く、直接の訪問者が70%とプライオリティーが高いですね。現在グループ4社で30万人のウェブ会員を保有していますが、来年3月の年度末までに45万人まで増やしていくつもりです。

 エディオンダイレクトの優先課題として「分母」「アイテム」「見せ方」を重視していきますが、まず「母数」を増やすための新規客開拓に着手します。5月21日から1カ月間オープニングキャンペーンを行い、顧客の上積みを狙います。さらに打ち上げ花火で終わらないように、その後も検索エンジン対策(SEM)などを地道に手がけていくつもりです。

――キャンペーンについて教えてください。

 年間プロモーションの基本戦略として「認知度・信頼性・独自性」という、ショッピングサイトにおける重要な3要素を固めるためのプロモーションを展開します。後発のため「ナンバーワン競争」では無理がありますから、「オンリーワン競争」のポジション構築を目指したいと考えているところです。広告宣伝活動ではマス媒体(フリーペーパーや新聞の突き出し広告)や、ウェブ(検索エンジンのバナーやリスティング・アフィリエイト)への定期的な出稿などを実施。メジャーなサイトとして知られるような宣伝活動のアイデアを模索していきます。

 スタート時点の会員数がその後の販促活動に大きく影響するため、オープニングキャンペーンではインパクトがあるキャンペーンプレミアムでいっきに会員獲得を狙います。メンバースロットゲームなどを通じ、ホームシアターのセット丸ごとなどインパクトのある豪華な景品を用意して訴求します。

――スタート時にアイテム数はどのくらい扱うのですか。

 音源商品などを含め約二十二万点を扱いますが、グループで共同開発したブランド家電「クオル」など独自性の強い商品を手がけることでアプローチ力を高めていきます。

――初年度の売り上げ目標は。

 純粋なネット売り上げだけで30億円まで広げたいと思っています。暮らしのデザインのカタログ事業では、カタログ併用のネット売り上げシェアを現在の14―15%から20%へと引き上げることが目標です。

家電店舗のプロがメディアミックス展開に挑む
商圏超えて戦えることが魅力

――家電と家具を一緒に販売する優位性についてどのように思っていますか。

 お客様が生活シーン設計を考えた場合、家電だけでは限界があると思います。その点で家具やインテリア商品は家電と大変親和性が高く、デザインや機能性を考慮した家具を提供すればサイトの付加価値は確実にアップするでしょう。

 私は家電のバイヤーをずっとやっていましたし、店舗用のチラシを作った経験もあります。でも昨年こちら(暮らしのデザイン)に来て実際に通販カタログの制作に携わった結果、初めてカタログという媒体の面白さに気付きました。家電メーカーは家具のことをあまり知りませんが、家具メーカーも耐加重やサイズなど家電のことをほとんど分かっていないと思います。

 これからは両方の仕様を合わせたり、家電コード用のホールを開けた機能性が高い家具を開発するなど、まず商品企画面で連動を図っていくつもりです。ウェブ上の見せ方も工夫し、コーディネートを重視していきます。家電はこれまで家具カタログの制作時に別調達する小道具に過ぎなかったわけですが、今後は両方が主役となり、かつ連携して展開することができます。

今下期にTVショッピングへ進出

――店舗とネット通販との決定的な違いは何だと思いますか。

 例えば店舗の場合はエリアで40〜50%のシェアを確保していても、物理的にそれ以上は広げられないため限界があります。一方、これはカタログ通販も同様でしょうが、ネット通販はいわば"空中戦"。商圏が決まっていないことから、手を変え品を変え小回りをきかせながらアイデア次第で可能性を広げられるのが魅力的です。

――グループサイトの統合計画は2003年に暮らしのデザインを買収した時からの計画で、カタログもウェブも全通販事業を移管するつもりだったと聞いています。その背景には他のチャネルへの進出計画もあるのではないですか。

 ダイレクトマーケティングのメディアミックスという視点から、今下期にはテレビショッピングにも着手します。カタログを扱う「暮らしのデザイン事業部」ではなく、この「エディオンダイレクト」が担当となります。モバイル受注やサイトとの連動を重視しているからですが、まだ現状では具体的なことは決まっていません。放送局や枠、中身についてもプランニングの段階ですが、当初は少なくてもインフォマーシャルではなく短時間のスポット的なものになるでしょう。

 商品についてはネットやテレビとの親和性を踏まえ、パソコンやデジタルカメラなどデジタル商品や、美容・健康器具の可能性が高いですね。できれば家具も組み合わせて提案するなど、他社のテレビショッピングと差別化を図りたいと考えています。大事なのはここ(テレビ)から自社サイトへ誘導することで、そうなれば受注用のサイトやセンターなど、バックヤードの整備も手がけていく必要があります。

――バックヤード整備について教えてください。

 これまでは暮らしのデザインが以前属していたダイエーグループの配送会社に依頼していましたが、4月以降は松下ロジスティクスとその協力会社に変更しています。同時にそれぞれ違った場所から調達して来る家具と家電を全国110カ所の拠点に集め、ドッキングして購入者宅へ配送する仕組みも構築しました。一緒に販売したのに家具と家電でお届けが違う時期になるのはお客様に不親切ですし、家具や家電は設置するという行為がありますから、お届け先に一番近い拠点でドッキングさせて配送するような仕組みが必要だったわけです。

 また、店舗との連動も図っていくつもりで、ネットで販売した家電の修理はグループの各社店舗で手がけていく計画です。逆に、店舗が閉まった後の問い合わせなどについては、カタログの受注を行っている当社のコールセンターで対応する考えです。

――ご自身はネットをどのように利用していますか。

 なくてはならないツールではありますが、私生活でも頻繁に使うようなヘビーユーザーではありません。ある意味では"人に優しくない"ツールとも言えるでしょう。そのような点からも、ハイタッチなサービスや物販以外の付帯サービスを考えていきたいと思っています。

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