2005.5 無料公開記事    ▲TOP PAGE

キュリオシティ、ヤフー傘下で仕切りなおし

致命的な出遅れとなった2年間




 仮想モール最大手「楽天市場」開設2年前の1995年。今の仮想モールの原型となるサービスが産声をあげた。今年3月まで三井物産グループとして展開していた仮想モール、「キュリオシティ」だ。

 その「キュリオシティ」が4月5日付で、三井物産からヤフーの手に渡ることとなった。売却金額はわずか1億円強。仮想モールは楽天の一人勝ちであり、その影響でその他の仮想モールの価値が極端に低くなっていることの表れだ。

 もう楽天には追いつけない――。こんな思いから、三井物産は「キュリオシティ」を運営する同名子会社をヤフーに売却。最終局面を迎えた仮想モール戦争で、未だ楽天を追い越す可能性を秘めるヤフーに同仮想モールの将来を委ねることとなった。

届かなかった西澤社長の危機感

 楽天との格差は、楽天設立とほぼ同時期から広がり始めていた。

 「キュリオシティ」は95年、三井物産の社内事業としてサービスを開始。当初、CD−ROM(写真)をベースとした展開を図り、楽天設立と同年の97年からネットへと発展していった。

 ただ、実質的に仮想モールを立ち上げたのは99年のこと。それまでの2年弱の間、楽天は月額5万円という格安の出店料を武器に着々と出店舗数を伸ばし、仮想モール最大手への階段を急激な勢いで駆け上がっていった。

 一方のキュリオシティはというと、95年から仮想モールの可能性に着目していたにもかかわらず、なかなか本格的な仮想モール展開に踏み出せないでいた。

 「キュリオシティ」の発案者、西澤泰夫キュリオシティ社長は、かねてから電子商取引への投資の重要性を社内で唱えてはいた。しかし、その思いが実現するまでには時間がかかり、一時は事実上休業に近い状態のこともあったようだった。

 西澤社長のジリジリとしていた思いの一方で、楽天は急成長。一気にキュリオシティを抜き去り、2000年には、ついに株式公開まで果たしてしまった。

 そして、キュリオシティが仮想モール事業に本格的に乗り出したわずか1年の間に、市場の評価としては、「仮想モール=楽天」との認識が根付いてしまった。【つづく】

(島田昇)


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