2005.5 無料公開記事    ▲TOP PAGE

事例研究E楽天「楽天スーパーポイント」

ポイントが拓くネットモールの縦横



 「変幻自在」のポイント活用――。楽天(本社・東京都港区、三木谷浩史会長兼社長)のポイントプログラムは、その内容がバラエティに富む。

ポイントが有する汎用性を有効活用し、「囲い込み」や「顧客育成」などポイントプログラムの基本戦略を実践、さらに次々に新しい企画を追加、顧客を飽きさせない仕掛けも備える。加えて「新規顧客」の獲得としての役割も持たせている。

プログラム自体が「Shopping is Entertainment!」という楽天の企業コピーを具現化する内容だ。

さらに楽天スーパーポイントは、ECの仮想モールからサービス業や金融の分野に事業範囲を広げ、サイト上での「ワンストップサービス」の展開を狙う楽天グループ各社の「橋渡し」役も担っている。ECモールの可能性を「縦と横」に拓く存在とも言えるのだ。

ポイントプログラムの優劣を簡単に論ずることはできないが、非常に完成度の高いプランと言えよう。

流通金額拡大へ向けた、グループ内の「共通言語」

 2003年4月から本格スタートした「楽天スーパーポイント」は基本的に売り上げの1%を会員に還元する仕組み。1ポイント=1円として、50ポイントからモール内での買い物等に利用可能だ。

 これはECの楽天市場だけに限ったことではなく、ポイント付加と利用の範囲は、共同購入、オークション、ダウンロードのほか、カードやゴルフ場などグループ全体の事業に及ぶ。ポイントが、グループの「共通言語」として機能しているわけだ。さらに、他社のポイントの利用が可能な「オープンポイント化」も図り、外からの送客も狙っている。

楽天がポイントプログラムを導入した理由、それは自社モール内での流通金額を拡大させることだ。楽天市場には、現在約1万1300店が出店している。楽天はこれら店舗から出店フィーと販売額に応じたマージンを徴収する。

このため、流通額の拡大は、直接楽天の収益に影響するのだ。さらに前述のように、楽天はECからサービス全般へと事業範囲を広げている。ECの顧客をサービスへ誘導するなど、一人あたりの「顧客価値」を高めることが求められる。

 そのためには、楽天が自ら顧客に直接的なマーケティングを行う必要がある。その回答の1つが、ポイントプログラムの運用なのだ。【つづく】

(野田靖)


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