2005.3 無料公開記事    ▲TOP PAGE

「アパレル店舗のEC参入は時間の問題」
ネット基点にアパレル販売に挑む

イマージュ・ネット

神田 大治 代表取締役社長兼CEO



 カタログを軸に展開しているシムリーの一事業部から独立し、一アパレル企業として挑み始めたイマージュ・ネット。アパレル店舗がECへ本格参入する前に、ネットによる「イマージュ」ブランドの確立を急ぐ。

「ネットベンチャーと戦う」

――シムリー本体のWeb事業部から独立してイマージュ・ネットを設立した狙いは。 

ネット事業分社化の構想は、2004年11月末から本格化しました。シムリーのWeb事業部長が辞職し、私に事業運営の話がありました。

別会社化を主張した理由は、まず、ネット系の人材を集めたいという考えがあったためです。シムリーのWeb事業部はもともと、カタログ制作の中の1つの課。カタログ制作の人などが集まってできたものなので、ネットに強い人はあまりいませんでした。今回イマージュ・ネットに来るのは1人。あとは、辞めたか、シムリーに残るかのどちらかです。

別会社化した理由はほかにも多々あります。まずは社風。シムリーとは異なり、もっと夢があって、ポジティブな考え方ができる社風にして、それを好む人を集めたいからです。

――その社風とは。

給料形態や人事評価はシムリーと全然違います。年功序列的な考えもなくし、新人でも能力のある人であれば仕事を与えていきます。こうした環境下でチャレンジしなければ、ほかのネットベンチャーと戦えません。「よしやってやろう」「これから成長する会社で、新たな事業を作っていこう」という人に入ってきて欲しい。親会社が上場していて安定した会社だからという考えで当社に入ってきてもらっては困ります。これから作っていく会社である点に惹かれるという方がいい。ここが分社化した理由です。

確かに、ウェブの世界はやってみて失敗することは多々あります。しかし、失敗してもそこから学ぶことがあるかもしれない。だから、前年対比なんて基準にはならないと思うし、成果で評価するのはナンセンスだと思います。会社から見て、その人を欲しいと思うかどうか。つまり、自分を選んでもらうためにどうするかが重要です。

 意思決定の部分も、独立してやっていきます。シムリーの考え方では、「何かやっても1年間様子見てみよう」だとか「来年からそれをやろう」という感でじす。しかし、ウェブでは1週間、1カ月で結果が出てくるもの。今、やろうと思ったことは、今から話を始めないと遅いんです。ウェブだけではなくて、企業は本来、そういうものだと思いますが、常にロジカルな判断をすごく求められると思います。特に、ネット社会は環境として変化が速いので、スピードが求められます。

「ネット=受注ツール」はつまらない

――これまでシムリーの本体におけるWeb事業部の位置付けは。

現状は受注ツールでしょう。しかし、私はそんな使い方はつまらないと思っています。ウェブはウェブで勝負できるようにならないとダメでしょう。

通販はこれまで、撮影、編集、印刷、製本――などすごくリスク率の高いビジネスだったので、これまでそれほど簡単に参入できませんでした。しかし、今、ECサイトは数百万円で作れるので、それこそ実店舗で強い会社が本格的に参入にしてきたら、太刀打ちできません。いや、絶対に本格参入してきます。

――カタログ通販のネット事業からECを基点に捉える必要がある。

 ECサイトは通販です。通販企業のネット通販は、これまでやってきた商売と非常に似ていたので、タイミングとして伸びているのです。

しかし、すでに化粧品などメーカー直販が増えてきているように、通販という枠をECに広げた場合、膨大な会社が参入しています。アパレルの場合は、「ユニクロ」さんなど以外は、まだそれほどECに参入していないですけれど、本格的にECに参入するのは時間の問題だと思っています。アパレルの店舗間では、店舗同士で闘いがあるわけです。だからECもECでやり方をきちんと考えなくてはいけません。

ヤフーや楽天、アマゾンもアパレルはそれほど強化していないので、本格化してくるのは時間の問題。そうなると、ものすごく巨大なライバルとして誰もが認識するようになるでしょう。そして、今後は、卸や商社などもECにどんどん積極的に参入してくるでしょう。

今、シムリーはネットの売り上げが上がっているけれども、それは受注ツールとして使われているからです。全社的に見れば、カタログの売り上げが落ちている分、ネットが上がっているだけ。総売上高はむしろ落ちています。これはほかの大手通販企業でも同じ傾向でしょう。全部、売上高は横ばい。ですから、通販企業が実店舗展開にこぞって進出してうまくいかなかったように、ECも絶対頭打ちになるんです。それに既存のアパレル店舗が入ってきたら、負けてしまいます。

――本体は、ネットで新規客を獲得しようという考えはあるのですか。

カタログはそもそも落ちているので、カタログで新規客を取っていこうという考えはどうなのかということです。自社でネットの売り上げが伸びているという話だけではなくて、カタログを除いて、ネットというメディアだけで売り上げをどれだけ伸ばせるかが重要です。

 よく言われていることですが、通販会社の業績が落ちている要因の1つは、競争相手が増えているということ。インナーの場合、ワコールやトリンプが商品をたくさん出しているので、必ずしもシムリーの商品力が落ちているということではなく、買える場所が増えているということです。ですので、カタログ通販もネット事業の展開で売り場を拡大し、商品訴求を強化する必要があります。

カタログ事業の縮小は目に見えている

――そのための施策は。

ネットが持つ、商品量を多く掲載できて情報をリアルタイムで更新できるメリットを活かします。さらに、今は画像を拡大縮小できるので、カタログよりはるかに大きくみることも可能です。最初に高画質で撮影すれば、商品画像にカーソルを合わせて1クリックするだけでカタログよりも大きく見せられる点も活用します。

カタログは1号作るのに1億円程度かかりますが、ウェブであれば数百万円でできます。カタログは部数を刷っても効率が悪く、そのうち採算が合わなくなってくる――。

このような側面などから見ると、カタログ事業がこれから縮小していくのは目に見えています。そして、採算が合わないのであれば、辞めざるを得なくなってきます。

――本体はネットの強化により、カタログ部数を減らして効率化しようと考えているのでしょうか。

 本体はそうは考えていないと思いますよ。カタログの部数は粘れるところまで粘ろうと思っていると思います。と言うのは、カタログのノウハウがあって30年もやってきた会社です。しかし、私が客観的に、5〜10年後の先を見て考えているということです。

――取り扱い商品のカテゴリーを拡大するのであれば、イマージュ・ネットという社名が今後変わる可能性もありますか。

今は、シムリーの主力である「イマージュ」を使った方が取引上やりやすい点もあるため、この社名にしました。今は「イマージュ」におんぶにだっこの状態。「イマージュ」という看板を掲げている限り、まずは「イマージュ」のブランドを向上させないといけません。 

その1つとして、ブランドイメージのアップにはテレビコマーシャルが効果的だと思っています。シムリー本体ももちろん考えていると思いますが、こちらとしてもやっていこうと考えています。サイトに集客して商品を売るのが当社の役割ですが、「イマージュ」のブランドを売っていくことも必要だと思っています。

 ウェブでも今後、テレビショッピングのようなものが流行りそうなので、洋服以外も動画を使った売り方で展開していきたいと考えています。今後、メンズの取り扱いを始めるなど事業を拡大していくと、今後は逆に「イマージュ」という名前が不要になってくるかもしれません。

(聞き手は峯木多恵子)


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