2005.2 無料公開記事    ▲TOP PAGE

具体像は見えないが高い可能性
ソーシャルネットワーキングがネットを変える


イー・マーキュリー 代表取締役 
笠原 健治 氏



新たな種を見つける才能

温和な人柄や柔らかな物腰からはは想像しにくいが切れ者。大学在学中に求人情報に特化したサイト「Find Job !」を立ち上げ、群雄割拠のネットビジネスに参戦。その後、各メディア向けにeメールでプレスリリースを配信する「@Press」を開始。年商は法人化した99年以来、毎年倍々で拡大し、今期は6億円を確実に突破する見込みだ。「ビジネスの種を見つけ出す」という才能に長けた笠原氏が見つけた“新たな種”――。それが2004年2月から開始した新事業「mixi」だ。

「mixi」とは話題となっている「ソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)。同コミュニティに参加するにはすでに会員となっているユーザーからの紹介がないと参加できないのが特徴。また、従来のネットコミュニティとは異なる点は原則として実名や顔写真、経歴などを公表することだ。

笠原氏率いるイー・マーキュリーは当時、日本では存在していなかったSNSを他社に先駆けて開始。無料サービスのため、収益面はまだ確立できていないようだが、「将来的には当社のビジネスの新たな柱になるくらいの高い可能性を有している」と今後の青写真を描く。

きっかけはスタッフからの一言

「mixi」開始のきっかけは開発スタッフからのこんな一言だった。「今、仲間内で流行っているものがある。とても面白いのでやってみたらどうか?」。当時すでに米国ではSNSは花盛り。そこで笠原氏も米国最大級のSNSサイト「フレンドスター」を使ってみたところ「確かにこれは面白い」――。

その後、急ピッチで事業化に漕ぎ着けた。スタートから10ヶ月が経過した2004年末現在、同社のSNSサイト「mixi」の会員数は約25万人を突破。現在も加速度的な勢いでその会員数を拡大させている。「これまでのコミュニティサイトは、バーチャルな場所にバーチャルな人間関係という、あくまでもバーチャルな世界だった。SNSはリアルな人間関係とか、実在性を伴っており、今までとは全く違う。現実社会の人間関係をネット上で再現したという意味では始めてのコンセプト」と会員の増加要因を分析する。

収益化よりも利便性が優先

現在、「mixi」単体では赤字。収益源が現状、広告とアフィリエイト収入に限られているためだ。ともあれ、巨大なトラフィックを手にするということは今後、何をするにしても強い武器になる。「いずれにせよ、長期的には高い収益性が見込めるビジネスだと考えている。そのために様々なことは考えているが、まずは収益よりも『mixi』の完成度を高めることが優先。ユーザーの方からの要望などは非常にたくさん頂いていて、現状まだまだ答えきれていないからだ」と笠原氏。

ネットの主役は企業からユーザーに本格シフト。ECにおいても成功のキーワードはユーザー間の「コミュニケーション」にいかに入り込むかにあると言われている。笠原氏が撒いた新しい種はこれからどのような花を咲かせるのかまだわからない。ただ、ユーザーの信頼という「水」を受けた芽は成功した多くのネットサービスがそうだったように、やがて大木に成長していくことだろう。
(鹿野利幸)

<経歴>
笠原 健治(かさはら・けんじ)氏
大学在学中の1997年11月に求人情報サイト「Find Job !」を開始後、1999年6月に法人化。代表取締役に就任。2001年2月にプレスリリース配信サイト「@Press」を開始。2004年2月にソーシャル・ネットワーキングサイト「mixi(ミクシー)」を立ち上げる。

▲TOP PAGE ▲UP