2005.2 無料公開記事    ▲TOP PAGE

新技術活用したサービス提案が最大の使命

インデックス 小川善美代表取締役社長兼COO



 携帯電話サービス企業として今や国内でトップを走るインデックスは、相次ぐM&Aや海外進出で業容拡大のスピードを加速させている。国内事業では携帯電話とテレビを連動させたサービスに注力。コンテンツ配信の延長線上に位置付けているコマース事業では、テレビや雑誌などマスメディアと連動させたサービスで消費者を取り込んでいく。(聞き手は本誌・峯木多恵子)

携帯電話とテレビ、シナジーは必ずある
――最近の事業展開では携帯電話とテレビとの連動に特に力を入れているようですが、狙いは何ですか。

私たちはテレビと携帯電話の連動を2000年からやっていますので、最近急に力を入れ始めたということではありません。

狙いは何かというと、携帯電話もテレビもマスメディアだと考えているためです。携帯電話はパーソナルな点もありますが、やはり、利用者数の観点ではテレビと同様、非常にマスメディア的な数です。そこには必ずシナジーがあると考えています。 

放送と通信の融合は80年代、90年代でも叫ばれていた夢みたいなことでした。しかし、本当の意味での放送と通信の融合は、テレビと携帯電話が最もシナジーがあるのではないかと思います。

――シナジーを生ませる有効な方法は何でしょうか。

 その1つとして昨年10月、民放キー局5社の共同出資により、携帯電話とテレビを連動させたサービスを展開する「テモ」を設立しました。同年12月から関東エリアで、NTTドコモのiアプリによる携帯電話を利用したリモコンサービス「テモチャン」と、モバイルサイト「TEMO」サービスを開始し、2005年春には全国でサービスを展開する予定です。

テレビを見るときに携帯電話をリモコン替わりに使ってもらったり、番組の補完情報を携帯電話で配信するなど、まずは番組に参加してもらうというのがテレビ連動の出発点だと思います。

――「テモ」のサービスは携帯電話のキャリア公式メニューを通さずに各社サイトにリンクするという仕組みです。御社の狙いやメリットは何ですか。

 テレビ局さん各社が競争する部分と、利害を超えて市場を一緒に創っていく点と、2つ必要だとテレビ局さんは思っていると思います。「テモ」はどちらかというと互いの利害を超えて、携帯電話とテレビを連動させるサービスのプラットフォームのようなものを創るというところでまとまりました。多分、テレビ局5社がまとまるというのは初めてでしょう。

 言い方を変えると、テレビ局さんにとって、「テモ」の事業をやっていることで、ほかのサービスができないという独占性もないですし、たとえテレビ局がキャリアと組んでほかに何かをやろうとすることがあっても、「テモ」がそれを阻害することもありません。

――テレビとの連動と言えば、御社の株主であるフジテレビやテレビ朝日以外に、グループ会社として買収した東京テレビランド(TTL)、ベルーナとの共同出資によるグランベル・ティーヴィーなどがありますが、各社はどのような位置付けですか。

 テレビとの連動とは広いテーマなので、その一部としてショッピングがあると思います。ただし、これがまた複雑な話で、テレビ局さんはテレビ局さんでテレビショッピングは重要なテーマとして取り組んでいらっしゃることなので、そこを一緒にやろうとしているわけではないんです。

われわれ独自の戦略として、テレビショッピングをいかに携帯電話と結びつけるかということに取り組むためにこれら企業群があるということです。

コマースの申し込み手段は最終的に、パソコンや携帯電話を含めたネットになると思っています。それが5年先か10年先かはわかりませんが。

――5年、10年先は遠い気もしますが。

 それくらいはかかると思いますよ。携帯電話を触っていない人は全然触っていませんし。今、50代くらいの人は結構利用しているので、あと5−10年ぐらい経てばネット通販って全然抵抗ないんじゃないでしょうか。

コマースは利益追求が最大の課題

――今、コマース事業はその仕組み作りという段階でしょうか。

 コマース事業は、今は単体のビジネスとして利益を追求していかなくてはいけない段階です。まだまだ利益を最大限に追求しきれていなく、まだその(追求する)余地がある状態なんです。

 将来的にはもっと大がかりにやっていく必要性がある気がしています。今はTTLやエフモードなど各社が単体で事業を展開していますが、5年、10年先は一本化して、つまり、メディアを複合してショッピング事業をやっていくくらいになるのではないかなということです。

――それは1社に集約するということですか。

 その方がいいのかなあと。これを言うと既存の株主は驚いてしまうかもしれませんが。

 逆に言うと、ネットだけではだめだと思います。携帯電話をテレビや新聞、雑誌などとうまく連動して、手段としてネットを結びつけていくことが重要で、あるときは店舗が必要かもしれません。携帯電話だけのショップもそれはそれで伸びると思うのですが、もっとビジネスを大きくしていくのであれば、複合的にやっていく方がパイは広がると思います。

――今期のコマース事業の売上高見込み(94億7000万円)は前年比6.1%増で、それほど高くは設定していない印象ですが。

 伸びが悪いからといって軽視しているのではなく、グループのEC事業として今、やらなくてはいけないのは利益率の改善です(前期の売上高営業利益率は0.08%)。

 これまではコマース事業を展開していることをアピールする方が優先でした。しかし今は、言葉は悪いですが、全体の足を引っ張っていて、事業自体の足元が全然できあがっていない状況なんです。

 売上高のトップラインを上げていくことはもちろん大切です。しかし、まずは収益性の改善を実証しないと、投資家から「インデックスがコマースをやらなくてもいいんじゃないの?」と言われかねません。

売上高を追求するのであればもっと積極的に展開することもできます。数億円規模の広告費をかければそれ以上の売り上げや認知度を獲得できる可能性もあるでしょう。しかし、そうならない可能性もあるわけです。ですので、その可能性にかけるのであれば今できる改善をして足固めをしてしまい、次の段階にいきたいと思っています。

――具体的な収益率の改善方法は。

グループ各社がそれぞれコマースシステムを持っている状況なので、今期はそれをとにかく1つずつ統合させていきます。今期中に2、3社は統合したいと思っているので、うまく稼働すればコストを全体で数%削減し、利益率を4〜5%にはもっていきたいです。

――コマース事業は画像や着信メロディーなどコンテンツ事業と比べるとやはり手間がかかるということですか。

 私の感覚では、デジタルコンテンツもモバイルコマースも根本的な違いはあまりないんですけれどね。デジタルコンテンツもライツ(権利)の獲得のために交渉したり、画面の作成やサーバーの維持など手間が掛かります。決算書などでセグメントを分けなくてはいけないので「コンテンツ」「コマース」と分けていますが、その必要がないくらいです。

将来は、独自サービスの提供を目指す

――今後2〜3年後、携帯電話を取り巻く環境や携帯電話ビジネスはどうなると考えていますか。

 今、一般的になってきた着メロや情報を入手するというのは当たり前だと思いますが、「フェリカ」のように携帯電話にさまざまなデバイスが組み合わさっていくことがあると思います。

――さまざまな機能が携帯電話に入り込むことで、消費者の生活スタイルは変わるのでしょうか。

 ただ便利になるということだけで、生活スタイルが根本的に変わるわけではないと思いますね。急に何か新しい行動パターンが生まれるというというより、小銭を払っていたのが電子マネーで支払えるとか、今までやっていたことが新しいものに置き換わって便利に変わるということでしょうか。

――使命としている「携帯電話サービスの提供会社」として生き残っていくのに重要なことは何ですか。

 配信するチャネルや、コンテンツを生み出す力を持っていなくてはいけないでしょう。ただ、いきなりその理想形ができるわけではないと思っています。他社も、形を変えながら自分たちの目指す姿に近づいているんだと思います。当社も今ある姿が決して完成形ではありません。

 目指したい姿って私たちの中では限定されていなくて、根本はメディアを使ってサービスを提供して、人々を喜ばせる力を持つということです。そのメディアに一番近いというのが携帯電話であり、ネット、放送――というところなので、そのドメインからはそれほど外れないと思います。
常に1つだけの事業だけを追求していくのも1つの選択肢だと思います。しかし、私たちのスタイルは多分違っていて、ある1つのものが成功した時点から、何か次の姿に変わっていかなくてはいけないという気がします。そのサイクルが昔は30年だったのが今は3年に早まってしまっているんです。

――今は携帯電話を使ってサービスを展開する基盤が作れたという段階でしょうか。

 テレビ連動などはそのステージにきているなという気がしています。それが完璧かは分かりませんが、そのビジネスを拡大できる可能性は十分ありそうです。

――次のステップは何ですか。

 ゼロだった携帯電話産業がここまで立派な産業になりました。これが第1ステージとすると、今は第2ステージに入り、携帯電話で何かをやるのが当たり前というプラットフォームができました。われわれはそのアドバンテージを使って今は携帯電話のサービスを提供してきたいんです。
ですからコンテンツ事業だけをやるわけではありません。コンテンツだけをやっていれば利益率も安定しているし、確かに楽ですよ。しかし、いろいろ冒険もしていきたい。当たり前になってきたコンテンツやモバイルコマースの次のサービスを提供していき、そこでインデックスの存在意義を追求していきたいと思っています。

当社は今、他社が作ったコンテンツを配信しているイメージが強いと思います。ですので、いつか遠い将来、第3ステージとして、自分たちが主体的になってサービスを作って配信する「携帯電話サービスの提供会社」を目指したいと思います。





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