2005.1 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
「iモード」はユーザーベースで4280万人くらいになりました。つまり、日本人の3人に1人が持つネット接続端末となったわけです。これ以上のメディアはないでしょう。 我々は今、これとリアルなものとの連動に非常に力を入れてやっています。具体的には、「QRコード(二次元コード)」や「おサイフケータイ(非接触型ICカード搭載端末)」――などです。 「QRコード」があれば「おサイフケータイ」はいらないということではなく、紙メディアとの連動であれば「QRコード」、リアル店舗との連動であれば「おサイフケータイ」が向いているでしょうね。 「QRコード」は約1400万人が使えるサービスになっているので、どんどん連動させてもらうのが僕らの願いです。広告物やカタログ、新聞にあるバーコードを見たらすぐに「ピッ」と読み取る消費行動を、もっと普及させていきたい。このことは是非、通販業界の方々に真剣に取り組んでいってもらいたいですね。 ――通販業界では現状、「QRコード」の期待値は低いようです。 そうですか?でも一般的な業界では極めて使われていますよ。新聞やその他の販促物にもほとんど載っていて、見かけない日はないくらいですから。「QRコード」を生成するプログラムは無料で利用できるようになっているのだから、使わない手はないと思いますけどね。 僕の感覚では、「QRコード」はすでに普及しちゃっています。うちのハイエンド機種は全部QRコードに対応していますし。 ――それよりも「公式サイト」に入ることを重視する声が多いです。 それは完全な間違いですね。「公式サイト」はもう4000サイトもあるんだから、そこの1つに名前が加わったところであまり大きな意味はないでしょう。それに、紙メディアからすぐにサイトへアクセスできる仕かけがあれば、公式サイトもへったくれもありません。 確かに、ネット専業の通販企業は紙メディアを持っていないのだから「公式サイト」に入ることは重要です。しかし、カタログ通販はカタログがあるんですから、それを使った方がよっぽど効果的だと思います。 通販業界の方々はモバイル通販の利用が増加することで、コールセンターのコストがどれだけ減らせるのかという見方の方が重要でしょう。電話受注がネット受注に置き換われば、相当のコスト削減になります。 例えば、航空券は「iモード」上で買った方がマイルをたくさん貯められます。ですからECの利用者が増え、付与するマイルの原資分を差し引いてもコールセンターのコスト削減を実現できています。 コストが減る分をユーザーに還元するような仕組みがあれば、利用者の底上げにつながるわけです。現時点では楽天やネットプライスのようなネット専業の方が携帯の使い方はうまいと思いますが、本来的にはカタログ通販の方が大きなメリットを引き出せると思っています。 ――「公式サイト」活用による集客という面ではどうですか。 常日頃から思っているんですけど、通販はいつも自分が買わないような一見商品と、いつも買うリピート商品にきっぱり分かれると思うんです。一見の商品に関しては、携帯電話の画面だけでは弱いので、紙メディアとの連動をお勧めします。 リピート商品はカタログを見なくてもすぐに注文したいという需要が多いはずです。これには、サイトにアクセスしたら品番や名前など購入するために必要なものはすべて入力されていて、あとは購入ボタンを押すだけというカスタマイズが必要になるでしょう。 このようなことを考慮に入れれば、さらに「公式サイト」は関係なくなりますよね。 我々の目指す方向性は、「anywhere in life」という標語が示す“生活携帯”です。つまり、人間が身に付けているものは大体携帯端末の中に入れてしまい、「いつも身近にあるのは携帯端末で、そのほかのものは持っていたり持っていなかったり」という状態です。 例えば、今後は「QRコード」に引き続き、「おサイフケータイ」の入っている機種をどんどん増やしていきます。そのほかの機能もどんどん増やしていきます。僕の感覚では、現時点で通販活用できる機能はすでにそこにある。それらをどんどん使っていただくことが、ビジネスチャンスにつながると思います。 もちろん、通販企業から僕らに何か新しい提案があるのであれば、どんどん提案していただき、それにできる限り答えていきたいですね。 ――「おサイフケータイ」は通販にどのように関わりますか。 携帯電話の中に入っている電子マネーを使って支払いをするというようなことは今でもできます。クレジットカードを持っていない未成年者の支払いも可能になるので、これが一番大きいでしょうね。 ポイントプログラムを使って顧客の囲い込みを狙う通販企業は多いと思いますが、ポイントを使ったリアル店舗との連携なども今後出てくると思います。 例えば、ある通販企業はあるレストランとポイントで提携することで、このレストランで食事をしたら通販企業のポイントになるというようなことが極めてやりやすいんです。 すでに市場はできている ――昨年モバイル通販を開始する企業が増えたのは、ネット接続料の定額制導入が影響したようです。 それは全く関係ないと思います。昨年の段階では「au」の2機種だけでしたし。むしろ、商品がそろってきたということでしょう。 「iモード」内におけるECの年間取扱高は、2年前の段階で推定1500億円ありました。すでに市場はできているので、僕の印象としては昨年から一気にきたという感じはしませんね。「iモード」ユーザーが1000万人を超えた2000年から通販は普及し始めていたと思います。 ――定額制と同じくらい大きな流れとして、携帯でパソコン(PC)のサイトを見られるサービスが登場してきました。今後、携帯とPCのサイトの融合も考えられます。 そうはならないと思います。機能としてPCのウェブページが見られるということと、それがユーザーにとって使いやすいかどうかということは別の話ですから。仮に携帯とPCのサイトが融合すれば、PCのサイトだけあればいいという考えも出てくるのでしょうけれど、それはあまりお勧めできませんね。 というのは、今そういったものがPHSで出ていますけれど、やはり、データ量が多いので、ものすごく重くて遅いんですよ。やはり小さい画面であれば小さい画面向けにカスタマイズした方が、軽いし早いのでユーザーにとっては使いやすいです。 ――スマートフォン(PDAと携帯電話の中間に位置するような端末)のようなものが出てきても? 同じです。スマートフォンだって画面はPCの画面ではありませんから。技術的にできることとお客さんが使うかどうかはあくまで別問題。それはなかなか分かりづらいことかもしれませんが、そのことは「iモード」の成功が証明しています。 それから、モバイルの方がPCよりユーザーが多いんで、ユーザーが多い方に合わせた方がいいと思いますけどね。 ――仮に携帯とPCが融合したら、キャリアがポータルとなっている現状が崩れそうです。 ポータルというのは連動したとたんにあまり意味がなくなるんです。カタログを100万部単位で発行されている通販の方が、そこからちゃんと連動させられればよっぽど強いポータルですよ。 先ほど触れたように、僕らの願いはさまざまなメディアと携帯を連動させていくことですから。 ――ヤフーのようなトップポータルは収益面でも非常に優れています。 まず、ポータルでお金を取る気はありません。我々のポータルは事業収益性で考えているのではなく、お客様が使いやすいサービスの観点から、いかにユーザーフレンドリーにするかなんです。そしていかにコンテンツプロバイダーのサイトに集客するか。 お客様に100%チューンしていることが、「iモード」が支持されている最大の理由です。一方、トラフィック(通信料)の売り上げは昨年で1兆円ですから、収益性は全く問題ありません。ビジネスモデル的にはその方がむしろいいと思っています。 つまり、我々が通販のコミッションをもらうというようなことをやるよりも、コンテンツプロバイダーさんが自由にいろんなことができる一番魅力的なプラットフォームにすることが、我々のビジネスモデル的にはよっぽど収益に貢献するものだと考えています。 そのためには、ターゲットを持って訪れるユーザーに対し、ターゲットのコンテンツにいきやすいポータルを作ることが重要なのです。 ――定額制が普及してもビジネスモデルは変わりませんか。 変わりませんね。それよりもお客様が使いにくくなったら、定額制にも入ってもらえませんよ。「au」さんがどれくらい定額制ユーザーになっているかは知りませんが、うちはフォーマの利用者の2割くらいがすでに定額制です。 ――「au」は自社通販に乗り出しました。「au」での通販利用を自ら促そうという狙いがあるようです。 我々とは違うアプローチですね。我々は自分たちでコンテンツを運営したり、通販をしたりということはしません。コンテンツプロバイダーさんがどんどんやってもらった方がいいと思っています。それが我々の基本ポリシーですから。 ――世間的には「au」好調、ドコモ失速のイメージがあります。 皆さんがご判断されることなので、私は何とも言えませんけどね。ただ、「iモード」は99年の立ち上げ当初からECを強く意識してきたので、買い物ができるサイトの数やコンテンツの種類などに関しては、一番バリエーションが多いのは「iモード」です。他社さんに聞いていただいても、そこは認めざるを得ないところだと思いますよ。 |
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