2005.1 無料公開記事    ▲TOP PAGE


“ITオバサン”、第2の進化
賢い買い手から賢い売り手へ

――楽天




 「旦那さんより稼がれているのかもしれませんね」。楽天(本社・東京都港区、三木谷浩史会長兼社長、URL:http://www.rakuten.co.jp)が運営するブログサイト「楽天広場」の岡元淳部長(「楽天フリマ」部長兼任)は、「楽天広場」内で活躍する主婦を中心としたアフィリエーターたちにこんな感想を述べる。

 月間の流通支援総額は数千万円――。「楽天広場」で月収数十万円相当を手にする優良アフィリエーターは、今や1〜2人ではない。

 ネット時代の“賢い消費者”として有望視されていた「ITオバサン」は、楽天の“賢い売り手”として第2の進化を遂げているようだ。

主婦層は生活の知恵の宝庫

 ITオバサンという言葉は、ネット業界で2〜3年前に流行った造語だ。ブロードバンド(高速・常時接続)の普及に伴ってネット利用がより一般化すれば、主婦層のネット販売利用が急増するだろうとの考えに基づくものだった。

 主婦層は家計を握る消費の主役。より安く、より賢い消費を目指す主婦層にとって、この願いを実現しやすいネットは今後大いに利用されるであろうと考えられた。

 ところが、こうした考えをさらに超えた現象が起き始めている。ITオバサンたちは賢い消費の手段にネットを加えただけでなく、ネットでアフィリエーターとして副収入を得ようと奮闘し出しているのだ。

 ITオバサンは賢い消費者であると同時に、賢い消費をするための手段とノウハウを持っていることが多い。例えば、ある生活雑貨を買うにしても、「それを買うならこっちの方が安くて機能は大して変わらない」「こっちを買えばこんなことまでできるようになる」――といったような生活の知恵の宝庫と言える存在。

 このような生活の知恵は、ブログによって簡単に広く発信することができるようになり、しかも今まさに何かを買おうとしている人にとっては最も欲しい情報の一つだろう。ネット販売との相性は抜群だ。

 実際、「楽天広場」のブログにおいて、取扱高ベースで数千万円規模を誇るアフィリエーターは「圧倒的に主婦が多い」(岡元氏)。アフィリエイト経由で売れている商品で見ても、「生活用品や雑貨など身の回りの厳選されたオススメ商品」(同)が多いという。

 つまり、ITオバサンは下手な店舗よりも販売力のある一店舗として、「楽天広場」内に何人も現れ始めているのだ。

中立な「消費者の声」維持できるか

 ITオバサンを始めとする賢い消費者たちを取り込むことで、「楽天広場」は月間利用者が500万人を超え、ブログでは最大規模に成長した。

 一方、一部のネット業界関係者の中には、「アフィリエイト活用によるポイント欲しさで商品を勧めるアフィリエーターも多数存在するはず。消費者の声が求められる理由の中立性を保つことはできないのではないか」との指摘もある。

 このような指摘に対し、岡元氏は「確かにそういったことはあるかもしれない。しかし、悪質なアフィリエーターはどんどん淘汰されていき、最終的には確かな情報を提供できるアフィリエーターに人気が集まる。実際、カリスマ的なアフィリエーターも存在する」と反論する。

 商用に絡まない「消費者の声」と、商用に絡む「消費者の声」。今後、このどちらが主流になるかは分からないが、このことはブログとネット販売の将来を占う上でも重要なポイントであると言えるだろう。

ブログは「諸刃の剣」

 一方、出店舗によるブログ活用はあまり進んでいないのが「楽天広場」の特徴だ。今後の店舗のブログ活用の見通しについても、岡元氏は少し逡巡してから「あまり活性化するとは思えない」との見方を示す。

 というのは、「店舗にとって一番重要なのはいい商品を出し続け、顧客といい関係を継続し続けること。それにより自然にブログで取り上げられ、集客効果をもたらす」(岡元氏)と考えているからだ。

 また、ブログは「諸刃の剣」(同)。いい評価が集客をもたらすこともあれば、悪い評価が客足を遠ざけることもあり得る。ブログを店舗としてどうこうするというのではなく、顧客の目に映る自分たちの姿を確かめ、日々の本業の改善に努めるための指標とする活用もあり得る。つまり、「あくまでブログの主役は消費者」(同)と見ている。

 ブログの登場により、容易に、しかも優良な売り手にもなりつつある消費者。店舗にとっては現時点の販売行為が、より一層、継続顧客の定着率向上につながることになりえそうだ。
(島田昇)

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