2004.8 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
GMOメディアアンドソリューションズという会社は、メールを中心にコンシューマーに対してさまざまなサービスを提供してきており、これがベースになっています。 今後もコンシューマー向けのサービスをやっていくのですが、つい2年くらい前までインターネットのビジネスモデルは広告モデルか課金モデルしかありませんでした。しかし、ある程度粗利率が高い商品であれば、直接商品を仕入れて販売するというモデルをネット上で成り立たせるプレイヤーが徐々に出てきました。 例えば、上場した健康食品のケンコーコムやゴルフ用品のゴルフダイジェストオンラインなどは粗利率が非常に高く、利益が出やすいでしょう。 GMOグループのメール会員が約700万人で、リーチ可能な人数で数えれば「まぐまぐ」の1200万人も加えて、ざっくり合わせて2000万人くらいのネット会員がいます。会員一人あたりの生産性とか利益率を考えると、当然そこ(EC事業)はやるべきだということで参入しました。 会員のベースがあるというのが我々の強みです。一般的に小売の場合コストが大きいのは人件費と広告宣伝費ですよね。我々は既に会員ベースがあるので広告宣伝費があまりかからないため、比較的粗利率が薄い商品でもECのビジネスとして成り立たせることができるので、そういう意味では非常に優位性があると思っています。 当然、粗利率の高い商品もやるのですが、普通の小売ならよほど売れないと赤字になってしまう商品でも、比較的我々は広告宣伝費がかからないのでビジネスとしてやっていくことができるのです。 今後は、会員にショッピングの楽しみを提供するというのが一つの考え方としてあるので、どんどん魅力的な商材を仕入れていきたいと考えています。 仮想モールとは“視点”が違う ――複数の自社店舗を持ち、ネットワーク型ショッピングという形で展開しています。ユーザーから見るとパッと見は仮想モールとたいして変わらない気もしますが、最大の相違点は何ですか。 我々の視点がコンシューマーに向いているということです。仮想モールの場合、事業者主体はホスティングされているショップに視点が向いています。つまり、店舗の売り上げを上げることが最も重要という立ち場ですが、我々は全く逆で、コンシューマーに受け入れられるものを仕入れて販売することに集中することで売り上げを上げるというのが基本です。ですから、見ている方向が仮想モール運営企業とは全然違います。 楽天が「インフォシーク」を持っている理由は、そこにホストされた店舗へのリーチの提供だと思います。楽天は「インフォシーク」を単独で使っている人にはあまり興味がないのではないでしょうか。 しかし、我々はコンシューマーそのものがお客様ですし、配送やサポートまで全部自社でやっています。ですから、よりきめ細かく、ユーザーと距離感の近いサービス提供が可能なのです。ユーザーが「買いたい」という商品がすべての店舗において反映されやすいですし、また、店舗間での商品のバッティングなどもなく、効率的に展開することができます。 ――やはり自社で仕入れ販売をやるとなると、一番重要なのは商品の目利き能力なんですか。 必ずしもそれだけが重要ということではありません。恐らく今までEC単独のキープレーヤーがなかなか大きく飛躍しなかった最大の理由は、「商品力と価格競争力があれば売れるのではないか」という誤った解釈の上で事業展開してきたことなのではないでしょうか。 しかしここ最近、ネットプライスですとかゴルフダイジェストオンラインなどはインターネットの特性、つまりインタラクティブ性やクローズドのコミュニティー性、メディアのコンテンツ提供力などが非常に重要であるというところに着目しています。つまり、ネットというメディアをいかに活用するかということです。 そういう意味では、我々はユーザーを囲い込んでいくためのメルマガを出す手段やタイミングなどといったネットメディアにおけるユーザーとのコミュニケーションノウハウを既に持っているので、それをECに転用してきたことが、急速な成長をしている最大の要因だと思っています。 ――メディアのノウハウをECに転用するというのは、具体的にはどういうことなんですか。 メディアには視聴者がいて、視聴者の高い反応がなければ広告はつきません。ですから、いかにしてユーザーの気をひくのか、ユーザーの関心を集めるのかに注力するわけです。それはECでも同じことが言えて、広告の反応を受けるのが外部のクライアントなのか自分たちなのかという違いなんです。 コンテンツの充実度やターゲティングのやり方、もしくは会員そのものを集める集客ノウハウといったことは、既存のメディアで培ってきました。広告に対するレスポンスが高いということはイコール購買力にもつながるとことなので、メディア事業とEC事業は非常に似ていて、結構近い関係にあります。 確かに、メディア事業とEC事業とではハードルが違い、ECの方がよりテクニックを要します。ただ、メディアで培った消費者とのやり取りの体感があるからこそ、ビジネスにうまく落とし込むことができていると考えています。 ――メディア事業で培ったノウハウの延長線上にECがあると。 そうですね。1人1人のデータを見るというわけにはいきませんが、マーケティングデータという意味でレスポンスレートですとか会員の行動傾向をマーケティング観点から分析し、例えば、20代の女性はこういう時間帯にはこういう商品を買っているというようなことを把握して次の展開に即座に結びつけているというイメージです。 最近では雑誌やフリーペーパーとの連動も多くやっているので、単純にネットという視点だけでなく、社会的にどういう商品やトレンドがもてはやされているのかということも視野に入れるようにしています。 ――売れ筋商品は何ですか。 やはりメディアの属性にあったミュージック、シネマ、化粧品、エンタメ系関連の商品が売れていますね。メディアは縦軸になっていて、そこにECが横串しで入っていくというイメージです。 ですから、単純にメディアのユーザーニーズがある商品は提供していくというスタンスなので、仮にある商品におけるどこかのモンスターサイトとバッティングすることがあっても、そこは我々が囲い込んでいるユーザーなので我々に強みがあるでしょう。 ――商品の目利き能力はあまり重要ではないのですか。 ユーザーの顔ぶれがある程度分かっている以上、それに従って商品選択をするというやり方が有効です。今は目利きのレベルが低くとも、純粋にある一定のユーザー属性の感性が理解できるレベルであればいいと思っています。そういった感性をユーザーと共有していく中で、目利きのレベルも育っていきます。 ただ、ECはこのやり方が正しいと思えるほどノウハウや市場は確立されていないと思っているので、売り上げにつながる可能性があるものはすべて試したいと思っています。 モバイル展開も会員ベース ――ネットプライスなどの企業を見ると、今後はモバイルでの展開も重要になりそうですね。 モバイルのメディア作りはあまりやっていませんでした。PCは渋谷のセンター街という感じですが、モバイルはまだまだ吉祥寺という感じですね(笑)。 モバイルは公式サイトに入れればトラフィックが得られるので、近日中にいくつかの公式サイトを立ち上げます。その中のサイトにはECも一つのサービスとして入ってきます。モバイルで売れているのは雑貨系や音楽系なので、その辺を起点に徐々に規模を拡大します。 ――御社がモバイルに参入する上で強みといったら何がありますか。 決定的に違うのはPCの会員をモバイルに持ってくることができるということです。ハードルは高いですが、やり方によっては十分に有効だと思っています。 例えば、300円の有料コンテンツであれば1万人誘導しただけで月間300万円の売り上げ増になります。1万人の誘導であれば、GMO単体で700万人もいるのだからそれほど難しくはないでしょう。 また、必然性があればPCユーザーでもモバイルを使うようになります。例えば、PCで検索した飲食店の地図を携帯に送る仕組みなどがあれば、当たり前のようにモバイル会員に移行するでしょう。誘導の導線に必然性を持たせるノウハウは既に持っているので、そのコンビネーションで多くのPC会員をモバイルに移行させることは可能です。 ――特にモバイルがそうですが、商用メールの開封率は減少傾向にあります。今後、メール中心というスタンスに変わりはありませんか。 必ずしもメール中心に固執しようとは思っていません。現時点でメールが最も有効なツールだからそうしているだけであって、中期的なリスクとしてメールがなくなる可能性もなくはないので、ほかに有効なツールがあればそっちを利用しても全く構わないと思っています。 メールの開封率減少については、確かにその傾向はあります。しかし、その傾向が顕著に表れているのはECが中心のメールなのではないでしょうか。当社はもう少し汎用的なメディアで、ECはコンテンツの一つです。 さらに、我々は開封率の減少に対する対処法は分かっていて、最後までデリートされずに選んでもらうにはどうすればいいのかというノウハウは既にあります。 ――EC単独の通販展開は既存の通販企業と比べて販管費を抑えることができるので、その浮いた部分を活用して商品力で優位に立てそうです。例えば、原価率の高い商品を仕入れたり開発することによって、商品の質で差別化を図ることなども可能なのではないでしょうか。 それは我々が通販業界にもたらすべき大きな強みですね。それは商品の仕入れ面だけでなく、お客様にいい商品をリーズナブルに提供するということにもつながりますし。 今は通販も含めた小売というビジネスモデルの抜本的な改革のタイミングにあるのかもしれません。今日は洋服屋さんだった店が、明日は食品屋さんになるということはリアルではありえないですよね。ネットはビジネスのスピードを軽減することができるのでそれが可能なんです。 |
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