2004.7 無料公開記事    ▲TOP PAGE

ヤフーなくなっても事業展開は問題ない

佐藤 康夫氏
   〔グーグル・セールス&オペレーションディレクター〕



5月31日、ネット業界では衝撃が走った。「ヤフー!ジャパン」がページ検索を「Yahoo! Search Technology」に、また検索サイトへのアドワーズ広告掲載を打ち切ったからだ。

本インタビューは5月上旬に収録。

この頃すでにXデーを認識していたはず。

だが、グーグル日本法人を統率する佐藤康夫ディレクターに焦りの色はなかった。

自信の根拠、それはアドワーズ広告の進化にある。(聞き手は本誌・鹿野利幸)

広告掲載を個人ページにも拡大

――昨年、米ヤフーがページ検索をグーグルから自前の検索システムに切り替えました。日本でも近々、切り替わるという話もあり、最大のトラフィック源であり、また最大の広告の掲載先であるパートナーを失う可能性が出てきています。


 日本では確かにヤフー(検索サービスのシェア)はすごいものがありますので、検索サービスのシェアに関しては(ヤフーとの提携が終了すると)現段階では何とも言えないところですが、広告事業は問題ないと認識しています。なぜならアドワーズ広告は2002年のスタートから大きく、また微に入り細に入り進化しているからです。

 

――アドワーズ広告の進化とは何でしょうか。

 

 具体的には広告ネットワークの拡大と、アドワーズ広告の機能面の向上です。

 

「グーグルアドセンスネットワーク」(グーグルの広告ネットワークに参加するパブリッシャー向けのプログラムの総称)はここに来て広がりを見せており、これによりアドワーズ広告の効果は向上しています。

 

アドワーズ広告自体はスタート当初から広告主から好評を頂いています。クリック課金であることに加え、そのクリック単価も入札という形で設定でき、一日の予算の上限もあらかじめ決めておけるため、投資効果がきっちりと出るからです。

 

そのくらい効果があるのであれば当然、もっと広告の掲載機会を拡大していきたいというお声は頂いており、当社としてもその効果を保ちながら掲載場所を広げていきました。

 

具体的には何をやったのかというと、まずは当初からの“グーグル”の検索結果へのアドワーズ広告の掲載に加え、ニフティなどのISPやヤフーなどのポータルなどパートナーサイトでの検索結果へのアドワーズ広告の掲載です。

 

そして今度は検索結果への広告掲載だけでなく、キーワードに合致するコンテンツページ「コンテンツ向けアドセンス」への広告掲載も今年1月から開始しました。

 

――コンテンツ向けアドセンスとは何ですか。

 

検索サービスの仕組みを使い、アドワーズ広告を関係性の高いWEBページのコンテンツに表示するものです。

 

「コンテンツ向けアドセンス」は世界全体では15万社以上に参加頂き、同等の広告掲載場所を持っています。

 

日本での実数は公表できませんが、オールアバウトドットコムや、エキサイト、ニフティ、ビッグローブ、インプレスなどいわゆる大手サイトにご参加頂いているほか、現在ではオンライン申し込みができ、小規模サイトや個人のブログサイトなどでも審査(サイトの構造のできや公序良俗に反さないものなど)に通れば、グーグルアドセンスネットワークに参加できますので、かなりの勢いで拡大しています。

 

 

クリック率意識した出稿絞り込み

 

――掲載場所の拡大によるアドワーズ広告の露出の極大化が“進化”だということでしょうか。

 

もちろん、それだけではありません。掲載面が増えれば増えるほど、人力でのコントロールは難しくなります。

 

そこを当社サイドで自動的に効果のある、つまりクリックレートの高い面(サイト)だけに広告掲載させるという機能などを色々と付加させて来ています。

 

広告掲載面を拡大させながら、実際の広告掲載は効果的なところに絞って、1広告あたりの効果を高めていく形です。

 

少しややこしい話になりますが、昨年、追加した新機能で「エキスパンドマッチ」というものがあります。例を挙げると、例えばデフォルト(ユーザーが何も設定していない初期設定の段階)で「通販」と検索キーワードに連動して広告が出るようにした広告主のアドワーズ広告は、「通販」の検索結果だけでなく、「通販」を含むいろいろなキーワード、つまり「通販新聞社」という検索結果にも広告が出てきます。

 

「エキスパンドマッチ」とはそれをさらに拡大して「通販」というキーワードを入力したユーザーが直近にどんなキーワードを入れたのかというところまで見て、「通販」という言葉が含まれていないキーワードでも広告が露出できるような機能が追加されました。

 

これとは逆に「通販」と入っていてもあまり効果がないキーワードやサイトに関しては広告の掲載が抑制、制限される仕組みです。

 

また最近、「地域ターゲット」というのができるようになりました。例えば東京からアクセスしているユーザーにだけアドワース広告を出せるものです。都道府県のほか、市町村レベルまで対応可能です。

 

これに関連してやはり投資効果をはっきり認識して頂くために昨秋から、「コンバージョントラッキング」というシステムを追加しました。広告主はこれを使うと、アドワーズ広告から飛んできたユーザーが、実際に買い物をしたのかしないか、した場合、どの位の売り上げになったのかという、実購買率をネット上で見られるようになります。

 

現在までのところ、トラッキングできるのはグーグルサイト内でのユーザーの行動のみですが、それでも無料ですし目安になると重宝されているようで、活用されている広告主も多いです。いずれはグーグルだけでなく、パートナーサイトの検索結果や、コンテンツページなど全アドセンスネットワークでも使えるようにしていきます。

 

機能面も以上のような形でどんどんそんな感じで増えていっていますので、利用者さんもすべてを把握されている広告主は少ないとは思います。ただ、実はそれでよいと思っています。広告主にはなるべく従来の広告出稿手順と同様にし、煩わせないような形を保ちつつも、我々はその裏側で(広告掲載場所を)“広げておいて絞る”ことで1つの広告あたりの効果を最大化していくと。これがアドワーズ広告の進化と言えるでしょう。

 

――日本における検索キーワード連動型広告をどう見ますか。

 

 米国でも本当の意味では去年からブレークしたという感じです。米国では2003年に初めて全インターネット広告に占めるリスティング広告が3割を超え、トップシェアになりました。バナーを超えて。一般的に日本は(米国よりも)数年遅れているとされていますし、日本では去年が始まりの年と言われていますので、今年はかなり伸びるでしょう。ですから、グーグルとオーバーチュアがどうこうというよりは、市場そのものの伸びが凌駕している印象です。

 

“Gメール”日本でもテスト

 

――米グーグルで展開しており、今後、日本で展開する可能性があるサービスはありますか。

 

米国ですでに展開しているサービスで日本でも実施したいものは「HTMLメール」へのアドワーズ広告の掲載ですね。時期は未定ですが、これは日本でも早期に導入したいと考えております。

 

――Gメール(無料メールサービス)はどうですか。検索の仕組みを使い、受信メールの内容をスキャンしてキーワードを見つけ出し、関連したテキスト広告を当該メールに挿入するという広告主から見れば、非常に面白いサービスだと思いますが、米国と同様、日本でもプライバシー面で物議を醸しそうです。

 

 Gメールの日本語化はする予定です。ただ、米国の英語ベースのGメールもいまだベータ版の段階ですので、具体的に(日本でのサービスインが)いつというのは未定です。

 

Gメールの仕組みも基本的には「コンテンツ向けアドセンス」と同じ方式です。プライバシーに関してはもちろん、いろいろなご意見をすでに頂いています。ただ、グーグルは創立者2人がプライバシーには異常に厳しい人間ですので、プライバシーには問題ないと確信しています。ですから、現在はこれをユーザーの皆さんに実際に使って頂いた上で、それがそんなに気になるものであるとかなど、そういうことも含めて、テストしている段階です。

 

――日本でもテストは開始しているのでしょうか。

 

 米国でGメールの発表自体が今年の4月1日からですので、4月の半ばくらいから、日本でも一部のユーザーに試して頂いています。ただ、日本語をきちんとサポートできていませんので、まだまだ本当にテストという段階です。

 

携帯電話に高い関心

 

――今年4月に米国を除くとスイス、インドに次ぐ、三カ所目の研究所を日本に開設しました。日本独自のサービスを開始したい狙いからですか。

 

それもあります。現段階では具体的なことは申し上げられませんが。ただ、今はどうしても、もともと米国の会社なので、米国で開発したものを他の国にといった形です。そうではなくて、ヨーロッパやインドや日本などで開発した技術を逆輸入することも出てきそうです。また、グーグルの検索で使われている言語は英語が絶対的に多いのですが、2番目にドイツ語、その後が日本語ですから。そういった意味で日本語の検索サービスの強化が目的という面は強いです。

 

特に日本の場合は先日、本社から来た上級エンジニアが言っていましたが、やはり(日本の研究所)期待しているものの1つは、モバイルです。日本は携帯電話が進んでいる国ですので、面白いアイデアがでるのではないかと。

 

今も携帯電話の検索サイトは一応、ありますが、本当にまだまだですので、伸びる余地はありそうです。

 



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