2004.6 無料公開記事    ▲TOP PAGE

世界一の企業になるため、ポータルを征す

堀江 貴文氏[ライブドア社長兼最高経営責任者]



 ライブドアがポータル(玄関)事業の強化に乗り出した。

将来的にメディアの中で広告効果が最も高くなる可能性を秘めたポータルサイトを征することで、今後の企業間競争を優位に進めたい考えだ。

世界一の営業利益を計上することを目指す堀江貴文社長は、後追いの戦略を主軸に1〜2年後にヤフーを抜くと公言する。(聞き手は島田昇)


企業としての“旨み”は

すべてヤフーに持っていかれる

――なぜポータル事業の強化に乗り出しているのですか。ポータル事業はすでにヤフーが圧倒的なシェアを持っており、これを超えるのは難しそうです。

 

難しいうんぬんではなく、ポータル事業をやらなければ(企業間競争に)負けてしまうのだからやらなければ駄目でしょう。なぜ負けてしまうのかというと、ポータル事業をやらなければ(ネット関連事業を行う企業としての)“旨み”がないからです。

 

ライブドアという企業を世界一の企業にすることが経営者としての私の使命だと思っていますので、難しいからといってヤフーに“旨み”を持っていかれ続けている状況をうじうじしながら見ていても仕方がありません。やる気も失せますしね。

 

(ヤフーがネット事業の旨みを持っていっていることに)薄々感づいている人は多いはずです。特に、通販業界の方々は(カタログなどの)通販がネットショッピングに徐々に置き換わり始めていることを肌で感じているはずですから、危機感も大きいでしょう。それは(ショッピングに限らない)すべての業界においても言えることです。

 

――旨みとはどういうことですか。

 

インターネットをメディアとして見た場合、今のリーチでテレビの1/3くらいのリーチがあります。つまり、雑誌などを超えるナンバー2のパワーを持ったメディアになっているということです。しかも、ネットは数年前にシェアとしては影も形もなかったメディアです。

 

メディアとしてのネットの急激な勢いの伸びには理由があります。ネットはニッチにアクセスできるし、インタラクティブです。ブロードキャストのテレビの向こう側にいるのは“制作者”ですが、ネットの向こう側にいるのは無限とも言えるほどの数の“人”なのです。ですから、ネットの方がメディアとして面白いですし、これからも急激にシェアを伸ばして3〜4年後にテレビのリーチを超えるでしょう。

 

ではネットで最もリーチが高いサイトは何かというと、ポータルサイトなのです。しかも、ポータルサイトはネットの中で8〜9割のリーチを持っています。

 

ネットがテレビのリーチを超えるとどんなことが起こるのかというと、ポータルサイトが最も広告効果のあるメディアになります。そうなったとしたら、ポータルサイトは非常に強い立場になれると思いませんか。

 

例えば、トヨタ自動車はテレビで膨大な数のCMをしていますが、リーチの高いポータルはより高い広告費をトヨタ自動車に要求できます。仮にこの要求を飲まないのであれば、自分たちでOEMをして自動車販売事業をやればいいんです。高いリーチのメディアで広告すれば売れるでしょうし、その方が儲かります。

 

今後はどんな商売をやろうがポータルサイトに負けてしまうのです。このことはほとんどの人が気付いていなくて、ネット上でコンテンツを提供する企業くらいにしか当てはめて考えていませんが、ネット上のコンテンツ提供企業はすでに死活問題になっています。

 

――何を強みとしてポータル事業に参入し、最終的にライブドアはどのような企業に変わるのですか。

 

ある強みを持っているということは企業としてあまり重要なことではありません。我々が最終的に目指しているのは世界一の企業で、世界一の企業というのは世界一の営業利益を計上する企業です。世界一の営業利益を計上できれば、世界一の時価総額の企業になれます。企業として大事なのは、儲かるか儲からないかであって、経営者の一番の使命は株主に対して世界一のリターンを返すことです。

 

お金の稼ぎ方というのはいろいろあって、何か特別な強みがあるから儲かるというように単純に割り切れる話ではありません。一般消費者から見るとマイクロソフトはこんな企業、ヤフーはこんな企業というイメージはあるでしょうけど、企業の実態はそういったイメージとは全く異なるため、そんなことはどうでもいいことなのです。

 

例えば、米ゼネラルエレクロニックはさまざまな事業を行っていますが、一番利益を稼ぎ出しているのは消費者金融事業です。しかし、今の稼ぎ頭は消費者金融ですが、100年前に一番利益を稼ぎ出していた事業は家電製品事業などでした。企業というのは日々変わっているし、稼ぎ方も日々変わってくるのです。

 

後追い戦略で十分に追いつける

「重要なのは見せ方」

 

――現時点でヤフーを超えるための戦略は。

 

ヤフーにあるものを全部そろえて広告するだけです。要するに後追い戦略ですね。

 

――ヤフーのコンテンツはどんどん進化しています。追いつけますか。

 

追いつけると思いますよ。後追いの方が既にあるものを見てそのまま真似するだけなんですから、楽じゃないですか。後追いの方が早いですし。

 

――いつまでにヤフーを超えられますか。

 

はっきりとした時期は分かりませんが、1〜2年で追いつかなければ負けてしまうでしょう。

 

――ただ、仮に並んだとしてもその後に優位性がなければいずれ追い越されます。

 

追いついた時のことは考えていません。そんなことは追いついた時に考えればいいんです。ネットのコンテンツやシステムは作るのに時間がかかるものではないですから。

 

――ヤフーと変わらない内容であれば、消費者はヤフーから乗り換えようとは思わないと思います。

 

そんなことはありません。50年前の米国人は日本車ではなく国産の車に乗っていましたが、今は日本車にも乗り、トヨタ自動車は自動車販売企業で世界一になりました。

 

――しかし、日本車の普及は優れた性能面が受け入れられた面が大きいはずです。

 

いいものが消費者に受け入れられると思ったら大間違いです。いいものだから売れるのではなく、売れているからいいものなのです。個々の商品の質に大した差はありません。

 

――「グーグル」はいいものだから広まりました。

 

グーグルは稀有な例です。確かに、いいものが広まるのは“美しい”と思います。だからと言って、私は「グーグル」を目指すような運まかせのリスキーな経営はできません。なぜなら、「グーグル」はたまたま運が良くてうまくいきましたが、こうした美しいものは圧倒的にうまくいかない確率の方が高いからです。世の中の大半のものは、売れているからいいものなのです。

 

もう一つの側面があって、例えば、スナック菓子の企業でカルビーと小池屋という企業があります。企業規模としてはカルビーの方が圧倒的に大きいのですが、小池屋は優秀なCMプランナーを起用したCMによりカルビーと拮抗する企業規模の会社であるというイメージを多くの消費者に印象付けています。

 

スナック菓子に大した商品の差はないと思いますが、見せ方によっていくらでも企業イメージを変えることはできるのです。

 

――どうやって「ライブドア」をCMしますか。

 

お金をかけてマス広告を打つだけです。すると、消費者は「ライブドアはヤフーほどではないだろうけど、ヤフーの6〜7割(のシェアが)ある企業なんだろう」と思うわけです。そこまで行けば、あとはヤフーよりいいものやヤフーにないものを特徴付けて見せていきます。そうすればヤフーに並べるか勝てるわけです。

 

――ヤフーよりいいものは何ですか。

 

それはどうでもいいことで、ヤフーの6〜7割になったときに考えればいいことです。それらは簡単に作れるものですし。

 

最後に勝つのナンバー3以下

 

――ショッピング事業の強化についてはどのように考えていますか。

 

楽天と同じことをします。恐らく、楽天の(仮想モールにおける)取扱総額の半分以上を稼ぎ出しているのは数十社でしょう。まずはそこだけ引っ張ってくればいいんです。楽天のトップ100の企業にはすでに(ライブドアにも出店するように)営業をかけています。楽天の出店者は(仮想モールにおける)楽天の一社独占状態に危機感を感じているので、それはたやすいことです。

 

楽天のビジネスの本質は、出店者が出店しやすいバーチャルフランチャイズチェーン(FC)ビジネスです。ですから、出店者はFCのオーナーとしてコンサルティングを受けているので、我々が一から教育をする必要はありません。つまり、ただ乗りができるわけです。

 

システムの提供は自分たちが物販を行うのと比べ、在庫などのリスクはありません。ネットオークション(競売)のシステムも4月から自社で提供することにしました。その方が儲かります。自社商品に関しては、まずは金融など在庫リスクがない商品を行っていきます。

 

――日本グローバル証券を買収して証券業に参入しました。ネット証券での強みは。

 

ネット証券は信用取引の貸付で儲けていますが、うちは財務体質がいいので比較的資金調達がしやすく貸付をしやすいのが1つ。ネット証券の利用者はポータルサイトで情報を見ながら取引するので、ポータルサイトと完全連携できるのが2つ目。また、うちは株主が7万人程度と多いので、その株主の方々の利用が期待できます。

 

――楽天もポータルサイトとネット証券の連携を進めています。

 

2番手の企業は相手にしていません。ナンバー1を目指すには、常にナンバー1の企業を見て勝負しなければなりません。楽天は当て馬ですよ。「漁夫の利」という言葉がありますが、ナンバー1の座の次にくるのはナンバー2の企業ではないのです。ナンバー1とナンバー2が激しくやり合って疲弊した時にナンバー3以下が出てくるのは、普遍的な真理です。



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