2004.3 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
大泉氏に言わせると、AOLジャパンは「プロバイダーの仮面を被ったダイレクトマーケティング企業」。数あるプロバイダーの中からAOLを選び、加入してもらうための各種マーケティングは、カタログ通販が新規顧客獲得を展開する時とよく似ているという。
AOLジャパンの経営の一部を担っていた当時は、様々な営業活動を計数化し、「この媒体は費用対効果がいいがこの媒体は悪い」というような「エクセル経営」を日々繰り返していた。その中で、常に頭にあったことは「いかに見込み客を獲得するか」ということだった。
AOL時代、新しいマーケティング手法も編み出した。
実は、店頭にプロバイダー加入のCD−ROMを置くという手法を初めて考えたのは同氏。その後、次々と追従する企業が現われ、新規顧客獲得の一手法として定着した。生粋のダイレクトマーケターというわけだ。 ただ、これまでのダイレクトマーケティングでは膨大なコストがかかる。 例えば、DMを送るにしても日本は米国ほどダイレクトマーケティングが盛んでないため、リストの整備がされてなく、しかも切手代が高い。テレビCMなどのマス媒体を使っても、費用に対してどれだけの成果が得られるかの補償などはない。 そんな時に大泉氏が触れたのが、成果報酬型のネット広告となるアフィリエイトプログラムだ。また、これまでのDMをEメールに置き換えられれば、大きなコスト削減につながる。さらに三井物産に戻り、当時AOLで席を並べたネットエイジ社長の西川潔氏からオープン型のポイントプログラムの提案も受けた。 インターネットの可能性はすごい――。膨大なコストを費さねばならないというダイレクトマーケティングの原点にある問題を踏まえ、低コストで顧客を獲得・維持できるネットマーケティングの可能性に確信を得たことが、「リンクシェア」や「ネットマイル」、メール配信支援サービス「ミームス」などを誕生させた。 異端児か革命児か 大泉氏はインターネットの可能性について、「まだまだ黎明期」と語る。ブロードバンド(高速・常時接続)通信の普及が急速に進んでいるが、むしろインフラが整い始めた今だからこそ、様々なサービスの誕生を予見しているようだ。 例えば「出会いサイト」。既に成熟商品となった携帯電話を媒介に、現時点ではその名の通り“男女の出会いの場”というイメージが強い。実際、数多くの見知らぬ男女がここに出会いを求めてトラブルも発生しているため、“危険なサービス”との見方が多い。 ただ、これも黎明期だからこそ起こる現象であり、5年後や10年後には、様々な人をつなげるサービスになる可能性も十分にありえる。大泉氏は「人と人のつながり方をインターネットは大きく変える」と、「出会い系サイト」など今あるネットサービスのさらに先を見ている。 大泉氏は自らを、“異端の商社マン”と称する。通常、商社マンはBtoBの事業範囲で数億、数兆というビジネスに携わる。これに比べ、ネットマーケティングの収益ははるかに小規模だ。明らかにこれまでの商社マンではない。 しかし、商流の中心は徐々に企業から個人に移っている。大手商社各社がこれに危機感を抱いていることも確か。
異端児か革命児か――。大泉氏の采配が、氏の下で働く商社マンの今後の呼び名を左右する。 (島田昇) |
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