2004.3 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
大半を占める通販・GMS商品 ――どのような商品が過剰在庫になるのですか。 当社はアパレル・雑貨を中心に、ネットを使った過剰在庫の流通支援事業「オンライン激安問屋」を展開しています。年間約200万点の在庫を扱っていますが、大手通販企業と大手GMSに下ろしているメーカーの商品が目立ちます。 一流レストランのシェフが残ってしまったスープの味見をして反省するというのがありますが、我々も同様に、残ったものを見れば何が問題なのかがよく分かってきます。 問題となっているのは、メーカーの取引先である大手通販企業や大手GMSとの取引き内容で、これが在庫を生み出す1つの原因を作っているのです。逆に、在庫が出ないのは「109」のような百貨店やセレクトショップに卸しているところです。 ――どうして通販の商品が過剰在庫になってしまうのですか。 企画から販売までの期間が長すぎるため、流行に付いていけてないのが問題だと思います。衣料品の主軸となる女性は特に流行に敏感です。 例えば、若い女性のデニムの股上などここ数年で長さが頻繁に変化しています。1月に良かれと思って企画した商品が7月にはまったく売れそうにない商品になることもあるのです。通販会社やGMSなどが普段からこのリスクと付き合っていればすぐにでも仕入れの方法を変えるはずですが、これらの在庫がほとんどメーカーに対して“未引き取り”という形で処理されています。つまり痛みを実感できないために改善が遅れているのだと思います。
また、通販の場合はカタログコストの問題があり、利益を上げるには大量販売を避けられません。1ページを完成させるために掛かるコストというのが決まっているわけですから、それをペイさせるためには何枚以上売らなければいけないと最初から決まっているわけです。ところが実際に店舗展開しているアパレルメーカーの場合でも、一型100枚も作らないというが既に普通になっています。流行の多様化が進みここ数年で多品種小ロットが当たり前になってきているのです。 さらに、在庫が残る理由とは別ですがコスト構造の問題も通販会社が抱える大きな問題と言えます。 例えば、通販会社の場合仕入れ値が5割を超えることはあまりありません。このことは業界の常識となっています。販管費のことを考えると、それ以上を超えると利益が出しづらくなるからです。しかし、小売への卸なら6割が普通です。使えるコストがまったく違うわけで、商品企画の段階で勝敗が決まっているのです。 私は通販と店舗小売はこれまで、逆さまなことをやってきたと思っています。 例えば、通販企業は見て触って納得して購入するという商品を開発できていなかったと思っています。通販会社が1万円の商品を3000円くらいで作ろうとしていた時に小売は3000円で作ったものを4000円で売る努力をしていたわけです。ですから、通販業界の商品開発は小売業界と大きくかけ離れていると思います。 実際、店舗に3年以上いた人は小売の商品と通販の商品を一目で見分けます。 通販業界は「どう売るか」という発想が未だに根強いようです。仕入れを店舗と同じ6割にするという発想をする人が出てこなかったのでしょう。これは真っ先に手をつけるべき努力だと思います。全小売業界に対して通販市場が依然として微々たるものである最大の理由は、そこにあるのではないでしょうか。 ――在庫になるのはGMSの商品も多いようですね。 在庫を作るもう一つの原因は、回転の速いマーケットに現在の流通構造が適用できていないことが考えられます。 回転の速いマーケットで夏物商品の場合6月末に納品し、7月に販売というスタイルが望ましいです。ところが、大手通販や大手GMSは前年の12月くらいから商談しているわけです。 6月に収めて7月に売っている分では、在庫は残りづらいです。そこに消費者と常に向き合って接客をしている小売の目利きが存在すれば、在庫する可能性はさらに低くなります。最近若い人に人気のお店は毎月新商品を投入しています。試しに一カ月、間を空けて行ってみて下さい。全商品が入れ替わっていることに気が付くはずです。 小さい小売のオーダーほど精度が高いのです。一方、大手通販やGMSの担当者は接客していないのでオーダーの精度が低く、しかも売り出しのかなり前に商談しているのです。在庫になるのは当然です。 結果、期中に消化することができなくなり、メーカー間での軋轢なども生み出します。 GMSの中には、メーカーからオーダーした1000枚のアパレル商品を契約違反にもかかわらず平気で500枚返してきたり、メーカーを売り出しの手伝いに借り出すことがあるようです。正月のセールの時に駐車場の整理係をメーカーにやらせたりすることもあるそうです。 そのため、公正取引委員会が大手GMSの不正取引きの調査に乗り出している動きもあります。7割近いメーカーが不満を持っているという報告もあります。小売業界はメーカーとの付き合いを再構築しなければならない時期にきているように私は思います。このままではいいメーカーは育ちません。 若く新しい可能性をつなぐ ――どうすればいいメーカーを育てることができますか。 ドラッグストア系やコンビニ、玩具、書籍などは完成している流通網がありますが、雑貨とアパレルの流通網は相変わらず混沌としています。 なぜかというと、新しくて若いメーカーが次々と出てきているからです。アパレルと雑貨においては小売店舗もそうです。下北沢や吉祥寺などに次々と新しくて斬新な店ができています。しかし、こうした若いメーカーと若い小売が出会う流通網と場所がないのが現状です。 それをつなぐために当社が行っているサービスが、既成商品のマーケットプレイス「スーパーデリバリー」なのです。 3年以内に目指したいのは「メーカーが開発した商品を売り出すとすると、その日から3日以内で全国の1000店舗以上にその商品を陳列される」という機能です。今でも既に200店舗程度なら可能です。それもすべての小売店とメーカーがダイレクトにつながっていますので、仕入れの精度は高く、在庫になる確率は極端に下がります。 実際、今でも「スーパーデリバリー」を利用している小売店のリピート率は70%を超えていて、返品率は0.6%です。 メーカー側では、創業3〜4年で、年商10〜50億円くらいの企業が人気があります。大手通販や大手GMSに卸しているような商品は売れにくいようです。弊社の会員のメーンになっている中小の小売店はGMSとの差別化を望んでいるのでしょう。
――収益面で見て成立するビジネスモデルなのですか。 「スーパーデリバリー」2002年2月にスタートした新規事業でまだ2年経っていません。毎月数百万円の開発費用が投資として使われています。しかし、システム開発投資もほぼ終わりつつあるので、今後は安定した収益が見込めると考えています。 私の知る限り、マーケットプレイスの成功例は多くありません。「スーパーデリバリー」が成功すれば、世界で初めてのマーケットプレイスの成功例になるかもしれません。 ただ、私にとっては世界初などはどうでもよく、期待しているのは明らかに流通革命が起きるということです。 ―― 事業が軌道に乗り始めたらどのような企業になっていますか。 数年後には「激安問屋」が「1」に対して、「スーパーデリバリー」が「10」の割合の売り上げになっていると思います。 当社の事業をイメージで表わすと、「オンライン激安問屋」が治療医学で「スーパーデリバリー」が予防医学のようなものです。「オンライン激安問屋」で始まった当社の事業モデルですが、今後は事前に在庫をなくしてしまうことができるような方向性を目指していきます。 ――しかし、通販やGMSの販売量は大きく、小売市場の中でも大半を占めています。そう簡単にメーカーが「スーパーデリバリー」にスライドしますか。 そう簡単にはいかないでしょう。しかし、我々のターゲットとなるアパレルで従業員4〜5人の従業員の小売で構成されるマーケットは、4〜5兆円あります。弊社はここの1/10とお付き合いするのが限界でしょうが、それでも4000億円、さらには雑貨やそのほかの商品もありますので、十分すぎるマーケットだと思っています。 既に、GMSよりも利益率が高く、月300万円くらい売って大成功だと言って下さるメーカーも出てきています。小売店の中では、弊社のシステムを有効活用して4店舗まで店舗拡大している店もあります。 ――在庫をなくすことでアパレル業界は変わりますか。 現在、靴下や下着を除いて国内で作っている服と輸入している服は約24億枚と言われています。これに対して、レジを通過している服は約12億枚です。つまり、需要の倍の服を生産しているわけです。単純に考えれば、需給予測の精度を高めて在庫を減らせば、服の値段は半額になるわけです。返品の保管費などを考慮すれば6割ダウンはするでしょう。 大至急この非効率な流通構造を改善することができれば、国内メーカーも価格で優位性のある中国製品といい勝負になるでしょう。 |
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