2004.11 無料公開記事    ▲TOP PAGE

競争阻害する楽天、第3の革命「ブログ」
“時の人”が語るネット販売の課題と将来像


――ライブドア堀江社長


 ネット販売の研究などを行うネットビジネス協会(J−NBA=事務局・東京都新宿区、新井治彦会長、URL:http://www.j-nba.com/)は10月8日、設立1周年を記念した特別講演を開催した。この基調講演を努めたのは、球団経営に名乗りを上げ、一躍“時の人”となったライブドア(本社・東京都新宿区、URL:http://www.livedoor.com)の堀江貴文社長兼CEO(最高経営責任者)。
 球界改革の引き金を引いた堀江氏は、ネット販売にどのような変革をもたらそうとしているのか――。講演趣旨と本誌のインタビューでまとめた。

1社集中は公正な競争を阻害する

 インターネットを始めて知った時に思ったことの1つとして、「これで簡単にお店を開けるな」と思いました。会社設立時から、Tシャツなどを何度かネット通販してきました。しかし、当時はネット利用者が少なく、決済手段も整備されていなかったため、商売としては成り立ちませんでした。

 それがパソコンの普及やブロードバンドユーザーの急増により、紆余曲折を経て何万という店舗がオンライン上でモノを売れる状況になってきました。右肩上がりのこの状況は、当分続くでしょう。

 ただ、仮想モールが“楽天一色”という状況には懸念しています。リアルの小売では、デパートや百貨店などを運営するいくつかの会社が、日々しのぎを削っています。しかしながら、ネットではそういう状況になっていません。

 以前、楽天に出店している店舗が共同のショッピングモールシステムを立ち上げようという動きがあったようですが、そこに“邪魔”が入り、立ち消えになった記憶があります。そういうことも含めて、あまり一箇所にトラフィックを集中させすぎてしまうと、モールに出店する方の立場がどんどん弱くなってしまうのではないでしょうか。

 この状況が続けば、ますます出店料や手数料が引き上げられることにもなりかねません。店舗の負担は重くなり、そのことが結果的に公正な競争を阻害することにもなると思っています。

 一方で、まだまだネットショッピングをしている人は少ない。こういう団体(J−NBA)があるのなら、今のうちに手を組み合って独自の新しいシステムを立ち上げたりすることもいいのではないかと思います。また、我々以外の新しいショッピングモールシステムにも出店することによって、仮想モールの手数料が全体的に安くなることにもつながります。

潜在的な底知れぬポータルの強さ

 ネット業界の今後について語らせていただくと、私はポータル(玄関)サイトの時代になると考えています。

 僕は基本的に人間は面倒くさがり屋だと思っています。ですから、ほとんどの人はブラウザ(ネット閲覧ソフト)のホーム(ブラウザの最初に表示されるサイト)に登録しているポータルサイトをよほどのことがないと変えません。

 ポータルサイトはユーザーにとって3つの利点があります。まず、ユーザーインターフェースが共通なこと。ポータルサイトが提供するサービスは共通の作りになっているため、分かりやすく、ナビゲーションもしやすい。次にシングルサインオン(1度の認証で許可されているすべてのサービスを利用できるシステム)に対応できること。IDとパスワードが1つずつあれば、それでほとんどのサービスが使えるようになります。

 最後にスピードが早いこと。体感すれば分かりますが、ヤフーなどはシステムに対する集中投資と優秀なエンジニアを確保することで、非常に早いレスポンスで画面表示します。この3つの特徴があるから、ユーザーはそこからほかのところには行かなくなるんです。

 一方、ブロードバンドユーザーはメディアに接する時間の半分をインターネットに費やしています。すでにテレビを抜いているんです。しかも接し方は、テレビのように受身ではなく、身を乗り出して接しています。ですから、メディアとしての広告効果も高いと思います。

 さらには、テレビではできない、インタラクティブでニッチな広告提案もできます。インターネットには、必ずと言っていいほど自分にフィットする情報があります。つまり、メディアとしての実力はテレビを超えています。

 ブロードバンドユーザーが80%を超えれば、ネットは間違いなく最強のメディアになります。この最強のメディアで最大のリーチはポータルサイト。しかも、テレビではありえない7〜8割のリーチがあります。

 もっと言うと、携帯電話の機能向上により、パソコン上と変わらないサービスを提供できるようになりつつあります。そうすると、ここでもポータルが重要になるのです。

 ですから、ポータル運営企業は今後、あらゆる面で優位にさまざまな事業を行うことができるようになると考えています。

メルマガ効果低下の救世主?

 また、ブログはインターネットの第3の革命になると注目しています。第1の革命はメールで、第2の革命はウェブブラウザだったと僕は思っています。

 というのは、ブログはホームページを作るのが簡単で、携帯電話からも簡単に更新することができます。ですから、誰もがホームページ上で簡単に情報発信できるようになります。実際、ここ最近は有名人を始めとした多くの人がどんどんブログを書き始めています。

 これによってどういうことが起きるのか、1つ例をあげます。

 僕の友人で無類のグルメ好きがいるのですが、彼はブログを使って美味そうな写真と巧みな文章でおすすめのお店を紹介しています。彼が紹介している店に1度行ってみたのですが、そこにいたお客さんはみんな彼の紹介による人たちだったんです。彼はそんなに有名な人じゃないんですが、それでもブログ1つで店が埋まってしまうほどのパワーがあるんです。

 これはイーコマースでも同じです。僕のブログでもある本を紹介したら、1日もかからずにそれを置いているネット書店の在庫がなくなりました。イーコマースとブログは今後、熱い関係になるのではないかと思っています。

 これまで販促手段の定番だったメルマガは、もう読まれないと思います。メルマガを使って情報発信する個人や企業は急増し、当初は喜んで読まれていたメルマガはスパム化しつつあります。メルマガの販促効果は、相当薄まってきているのではないでしょうか。

 メルマガより今はブログです。ブログはプル型で、メールはプッシュ型。ですから、面白いブログを書き続けていれば、必ず固定客が付き、離れません。ぜひ、ブログとイーコマースの関係性を、みなさんにも体感してもらいたいです(談)
(島田昇)
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