2004.10 無料公開記事    ▲TOP PAGE


シニア世代の攻略は「
刷り込み」と「“ウルトラC”はないという認識」


シニアコミュニケーション 代表取締役会長兼CEO
山崎 伸治 氏




シニア向けビジネスは儲かる?

よくご質問を受けるのが「シニア向けの商売は儲かるのか?」というものです。儲かる儲からないという前提の話をさせてもらえれば、ポイントは2点です。単価が高いか、ボリュームが多いか。単価という点では、シニア層は可処分所得が高く、実際の消費性向という部分でも他の世代に比べて、圧倒的に高い訳です。ボリュームはどうかと言うと現在、日本の成人人口の半数は50歳以上ですので、確実に大きなマーケットであることは間違いありません。もう一つ重要なポイントはロイヤリティの高い顧客になり得るかと言う点。シニアは若年層と比べて、ブランドスイッチをしないという傾向があります。以上を踏まえるとターゲットとしては非常に魅力的だと考えています。

また、「シニア層のビジネスでは何が儲かるのか?」というご質問も多いです。これも、先ほど申し上げた通り、日本の成人人口の半数はシニアですから、シニアに向かない事業はない訳です。逆にシニアに向かないということは、その事業が成り立たないという話です。

私はむしろ、どの分野が向いているということではなく、その分野でどうすれば、シニアに受けるのかを考えるのが、重要だと思います。新規事業をやるのであれば、この分野の方が儲かりそうというものは、当然あるのですが、業種によってこの分野が儲かる儲からないというのはありません。基本的にはどの分野でもやり方次第。逆に言うとその中の一部の企業はシニア向けにキチンと手を打っていて、利益を上げているところも出てきています。

35%のネット利用者取り込みが鍵

シニア層のネット利用率はここ5年で大きく変わってきています。5年前までは50歳以上の、いわゆるシニア層全体のネット利用者の割合は一桁台でした。それが現在では全国平均で35%を超え、都市部だけ見れば55%を越えています。そのネット利用者の中で、「ネット通販を使ってみたい」と考えている方々は我々の調査では8〜9割となっています。

また、ネットは情報を得たい人にとっては深く調べることができる環境です。紙媒体などでは一部しかない情報も、ネットだともう少し深い情報まで得る事ができます。シニア層は「時間消費者」という面があり、時間の有効利用という観点で、ネットサーフィンやネットショッピング自体が楽しいんですね。そういう意味で言えば、シニア層のネット通販のポテンシャルは非常に高いと言えるでしょう。

ネットの特性自体も非常にシニア層に向いていると言えそうです。シニア層は自分の価値基準というものを明確に持っているので、マスプロモーションではあまり実購入には結び付きませんが、逆に自分にとって信頼できる人からのリコメンドなど、口コミに近い要素が非常にはまります。

シニア層の場合、やはり最初にネットで商品を購入してもらうまでは個人情報の入力など、若年層に比べて、圧倒的に難しい要素があり、非常にハードルは高いです。ところが1度商品を購入して、普通に商品が届くと一気にネット通販へのハードルが下がります。例えば、楽天で買い物をして、楽天から商品が届いたとなると「いや、楽天はすごいよ」「楽天はちゃんとしている」と。

そして「この前、楽天で買ったけど、結構いいよ」と自分の感想を一気に友達に広げます。すると友達のシニアも自分の知人からの評価は信用しますので、一気に利用のバリアが下がります。これを私は一種の「刷り込み効果」と考えていますがシニア層の場合、この「刷り込み」が非常に有効で、単なるポリモーションだけではなかなか購入してもらうことが難しい層とも言えます。

ですから「シニア層のネット利用率が35%だから対策はまだいい」というのはむしろ逆で、今こそがネットによってシニアを取り込む最適期と言えます。なぜなら、現在のネット利用シニア層はすでにセグメントされた「情報感度・消費意欲の高いシニア層」であり、効果的なアプローチが可能だからです。

シニア向け通販のポイントとは

 シニア層をターゲットにネット通販を行う際のポイントとして、当然インターフェイス、ユーザビリティも工夫しなくてはなりませんが、まず商品を見る目が肥えている難しい消費者ということを認識しなくてはなりません。結局、これだけやっておけば、シニア層は大丈夫だとは思わないことが重要です。

簡単に「シニア向けにはこのコンテンツを載せておけば良い」と言っているようなところはほとんど失敗しています。ネット上に限ったことではないですが、結局、シニアが望んでいることをきちんと把握して、きちんと対応しようとする真面目な会社がシニア向けビジネスで成功していると言えます。

「シニア層向けアプローチのウルトラC」は存在しません。「シニア層のどんな層に対して、何をどうアプローチしていくのがいいのか」、それぞれの企業の業種やポジション、カルチャーによって答えは変わってきます。まずは大ぐくりな「シニア層」ではなく、「どんなシニア層」にアプローチしたいのか、細かく分析し、戦略を立てることが重要です。ロイヤルティが高く、ライフタイムバリューの大きいシニア層の取り込みこそが今後の通販事業にとって最も重要なことだと言えるでしょう。
(鹿野利幸)

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