2003.6 無料公開記事    ▲TOP PAGE

消費者の利便性を考えれば、
楽天がポイントの業界標準になるべき

楽天取締役 吉田敬氏


2003年におけるマーケティングの柱

――ポイントサービスへの期待度は。 

 ポイントサービスは昨年8月、テスト的に開始しました。「楽天スーパーポイント」として本格的に開始したのは11月で、さらに今回の“仮想通貨化”という3段階を経ています。1年内の短期間で3回もバージョンアップするシステムは稀です。というのも、ポイントサービスは当社の2003年におけるマーケティングの柱だからです。

近い将来の目標である年間流通総額(「楽天市場」内での取り扱い総額)1兆円を実現させるには、出店を増やして流通総額を上げるよりも、1店舗あたりの売り上げを上げていくことの方が重要です。それには1店舗あたりで8倍くらいにまで売り上げを高めなければならないでしょう。ポイントサービスはそのためのマーケティング手段の一つです。

――他社が二の足を踏む中で“仮想通貨化”に踏み切れた理由は。

 これまで、都心の大型家電量販店のようにネット上の共通ポイントが買い物時の決済手段の一つとして使えなかった最大の理由は、流通額が少なかったからだと思います。ネット上の共通ポイントを運営する企業は会員が何百万人いても、入会だけで終わってしまっているところが多いのではないでしょうか。

一方、「楽天市場」の流通総額は大きいため、多くのポイントが発行されて使われることになるでしょう。具体的に言うと、今では7割の方が楽天のIDを使って買い物をしています。月間の流通総額は100億円弱なので、70億円分の1%である7000万円程度のポイントが毎月発行されることになります。

法的な問題点はない

――仮想通貨化に伴う法的な問題はないのか。

 家電量販店のポイントのような前例もあるので問題はありません。確かに、リアル店舗の実績は一企業内で流通するポイントで、複数の企業や個人の店舗で横断的に利用できるポイントの実績ではありません。しかし、「楽天スーパーポイント」は商店街のくじ引き券に近いイメージです。それは特定の商店街の中にある店舗でのみ使える商品券で、当社のポイントサービスもこれと相違ないと思っています。

――共通ポイントのデファクトスタンダード(業界標準)にもなりえる。

今はそうした認識を持っています。こんなことを言うと自分たちの都合のいいことばかり言っていると思われるかもしれませんが、実は消費者にとっては最終的に楽天で消費できるポイントがデファクトスタンダードになることこそ一番使い勝手のいいスタイルだと思います。

というのは、今はクレジットカード利用など色々な場面で異なる種類のポイントが発行されますが、それらを一つのポイントとしてまとめて大きな買い物をする方がいいと思います。楽天は“1兆円構想”の中で“ないものはない品ぞろえ”を目指しているため、パソコンから地方の食べ物まですべてある楽天で使えるポイントは消費者の利便性を大きく押し上げるのではないでしょうか。 

――他社ポイントとの連動予定は。

今は公式に契約を結んでいるところは1社もありませんが、外部との連携は下半期に向けて進め、夏くらいにはやりたいと思っています。また、ポイントの交換という連携だけにとどまらない展開も考えています。ポイントを発行する企業が、本業ではない景品交換を自前で用意するのは、それなりの準備と運営コストがかかります。これを、“ない商品がない楽天”が請け負うことは、魅力的に映ると思っています。

「1+1=2以上」で年末商戦2倍

――仮想通貨化でどういった効果が期待できるのか。

一番分かりやすい目標は、去年12月の流通総額の2倍を今年12月に実現させることです。そのために「ポイント」「ID」「モバイル」「サーチ」――の4大プロジェクトを掲げています。確かに、ポイントは4大プロジェクトの柱とも言える存在ですが、今後のマーケティングではこれらを組み合わせた展開を行います。

例えば、モバイルとポイントを組み合わせるだとか、サーチと準8大プロジェクトの中にあるアフィリエイトを組み合わせることなどで、1+1=2以上の効果を上げたいと考えています。
(島田昇)


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