2003.6 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
店舗と仮想モールの思惑に違い J−NBAは約1年前、会長でワイン販売の有力サイトを運営するワイナリー和泉屋(本社・東京都板橋区)の新井治彦社長ら3人が中心となり、月1回のペースで中小オンラインショップの現状課題と今後に関する勉強会を行っていたのがそもそもの始まりだ。 まず、現状課題としてどのような問題があったのかというと、“売り場”となる仮想モールであらゆる展開を考えてこれを反映させようとしても、複数の店舗が出店する仮想モールは一店舗一店舗の考えや主張には完全に対応しきれない。また、複数の仮想モールに出店すると仮想モール間のシステムが異なるため、バックオフィス処理の一部が混乱するという問題などがあった。つまり、現状の仮想モールでは“売り場”の使い勝手に問題があるとの認識だ。 一方、仮想モールは同業他社との競争の大前提として有力店舗を数多く取り込み、これを囲い込みたいという思惑がある。特に、最大手の「楽天市場」が定める出店舗の他サイトへのリンク禁止はその顕著な例。必然的に、自由に営業をしたいという店舗側の思惑と、自分たちの営業圏にとどまってもらいたいという仮想モール側の思惑にすれ違いが生じていたと考えられる。 「退店してもらうしかない」 そのため、J−NBAが仮想モールを設立するとの一部の報道に対して楽天は、「仮想モールを設立する店舗には退店してもらうしかない」(三木谷浩史楽天会長兼社長)と過敏に反応している。一方、J−NBAは本誌の取材に対し、「J−NBAが仮想モールを設立することはない」(新井J−NBA会長)とコメントしている。 ただ、J−NBA設立の説明資料には仮想モールの立ち上げが明記されている。新井会長のコメントとJ−NBAの説明資料を見比べると、J−NBAとして仮想モールを立ち上げることは、楽天の圧力で見送らざるをえなくなったと考えるのが普通だろう。実際、J−NBAの仮想モール立ち上げに関する報道の後、楽天の幹部と新井会長がJ−NBAに関する話し合いを目的に接触している。 リスク分散の道を模索 それでは、J−NBAは仮想モール立ち上げとは異なるどういった目標に向かって活動していくのだろうか――。 J−NBA事務局長の粕谷日出明氏によると、「企業会」で実験的な仮想モールを9月にも立ち上げることを視野に入れているという。J−NBAの中心となる「店舗会」では仮想モールを立ち上げないという位置付けだ。 また、仮想モールを運営するISP数社と組み、現状のISP数社の仮想モールにJ−NBAへ参加するオンラインショップが集結する優良なショッピングコンテンツを反映させることも考えている。J−NBAの優良店舗を各ISPがそれぞれのコンセプトに基づいて選択し、自社の仮想モールに優良ショッピングコンテンツとして紹介するイメージだ。 しかし、上記2つの案は現状で考えられる方向性の1つであり、今後のJ−NBAの話し合いによってはどういった展開を見るかは不透明とも言える。 ただ言えることは、中小のオンラインショップは現状の仮想モール、特に楽天に依存し過ぎているという現状を変えなければならないという危機感を持っているということだ。 J−NBAの前身となる勉強会が始まった約1年前は、「楽天市場」への出店費用の事実上の値上げがあった時期だ。当時の取材の中で、「楽天のアクセス数は圧倒的。しかし、楽天に匹敵する仮想モールはないので、『値上げをします』と言われても反対して退店することはできない。値上げによって『楽天に頼りすぎている現状を打破しなければ』と考え出した店舗は多いようだ」(ネット販売業界関係者)との声があった。 J−NBAが上記の認識を当時から持っていたかどうかについては分からないが、少なくとも中小オンラインショップは一店舗では仮想モールに自分たちの声が届かないにも関わらず、仮想モールと命運をともにせざるを得ないという存在だ。ましてや、既存のリアル店舗の業績不振などからネット販売が生命線となっている企業にとっては、こうした現状を憂慮し、リスク分散の道を模索し始めるのは、当然の成り行きと言えよう。 |
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