緊急企画「ライブドア、セシール買収の衝撃」<会見全文(5)>    ▲TOP PAGE

会見全文(5) <記者会見(下)>

堀江「カタログはなくならない」
猪瀬「ほかの結果もあったかもしれない」



■堀江「国内有数のネット流通グループ目指す」

――堀江社長が「楽天に負けないように」と発言されたが、このタイミングでの業務提携発表の設定には、今回の楽天とTBSの動きに対抗するという狙いがあったのか。また、楽天への対抗でTBSと何らかの可能性があるのかというところを聞きたい。

 堀江「楽天とTBSの話がある前からこの話は進めていて、たまたまタイミングが今日だったということだ。当社は最近、ジャック・ホールディングスという車の買い取りの会社を買収している。こちらは本体で買収したのだが、売上高は400億円超で、セシールの方が700億円弱あり、これと合わせると1200億円近い売り上げとなり、さらにライブドアの売り上げを合わせるとかなりの流通総額をグループ全体でかかえるようになる。これにもっとドライブをかけ、リアルの部分も含んでいるが、特に通販ということで言えば、ネットとの親和性はもともと無店舗販売ということなので、早い段階で国内でも有数のネット流通企業グループになることは可能なのではないかと思っている」

■堀江「当初はメーカー的な機能も必要」

――自社で女性のアパレルやインナーのメーカー的な機能を持っている企業を買収することのメリットとデメリットを教えてもらいたい。

 堀江「本来であれば、たくさんの企業にライブドアの仮想モールに入ってもらいたいが、我々は仮想モール事業を始めて1年なので、7〜8年やってきた楽天と比べて、やはり何年かは遅れていることは否めない。なるべく早く、キャッチアップするという意味では、ライブドアマーケティングのような会社がいわゆるメーカー的な機能を持って、そしてゆるやかなグループ成長のカーブ、シナジーを発揮するというやり方も、1つの大きな成長をするためのドライブになるのではないかと考えている」

 「ライブドアマーケティング的に言うと、メーカー機能を持って、中国に工場があったりするのだが、そういうところとITのシステムをきちんと作って、今猪瀬社長が着ているような1万7000円のスーツをビルド・トゥ・オーダーで、セミオーダーで安価に、高品質なものを提供するというのは、通販の大きな利点だ。店頭で採寸してもいいし、自分で採寸してもいいし、注文後に約1週間でデリバリーされてくる。こういうことをやるには、最初は自分たちで提供しなければならない。最終的には自分たちはプラットフォームや決済だけを提供すればいいのかもしれないが、やはり小さな企業体でそこまですべてやってしまうのはなかなか難しい。特に、IT分野で言うと、昔からやっている企業は弱い部分もあるので、我々のようなIT企業が支援をして、そしてビジネスを立ち上げて、最終的にはこの部分はコモディティー化していくので我々はプラットフォームの提供に徹するという流れになるかもしれないが、ここ何年かはおそらく、自分たちでメーカー機能を持っていた方が機能的にいいものをお客さんに提供できると考えている」

 「そういう意味ではライブドアマーケティングはメーカー機能、ライブドアの方は、以前は子会社だったライブドアマーケティングの持ち株比率を段々と減らしていったのは、そういった意味合いもある。要は、ライブドア自体はプラットフォーマーとしてイーコマース事業に関わっていくという決意の表明だ。ライブドアマーケティングはライブドアが持っていないメーカー機能などの部分で強みを発揮していく。これがゆるやかなグループ全体の成長につながっていくということになると思っている。当然、我々の強い金融分野に関しては、多大な協力ができるというところがある」

――TOB終了後、時価の半値で20%の株式を取得できる新株引き受け権が付与されているが、これは今回の資本提携に欠くことのできなかった条件の1つであるのか。さらに、新株引き受け権で取得したその株は、市場で売却するような形で、ある程度、投資か資本を回収するという手法に使われるのか。これは当然ながら上場を維持するということで重要な部分だとは思うがどうか。

 岡本「新株予約権を引き受ける理由は、今後は機動的に資本増強ができるようにするためだ。資本・業務提携によりさらに事業拡大をしていこうと考えている。それに伴い、さらにプロモーションにパワーをかけてコストをかけてというタイミングで大きな投資をする可能性もある。そのタイミングを選択できるのが、新株予約権だと思っているので、そういった条件も含めて発行させていただいたということだ」

――子会社に対して資金が必要となれば有利発行ではなく時価発行で子会社に資本を投入した方がよりタイミングよく、市場で株価が下落するという要因にもならない。

 岡本「基本的に我々は長期保有を前提に考えていて、そういった部分でいくと株価の下落を積極的に起こしたいというのは、筆頭株主なのでありえないことだ。有利発行にしたというところでは、少なくとも企業経営のリスクを回避したいという狙いがある」

――長期保有ということは、20%の新株に関しては行使するにしても何年間は売却しないというようなルールはあるのか。

 岡本「社内的にルールは設けていない。当然、今回のTOBで上場廃止基準に抵触する可能性もある。そのタイミングには市場で売却させてもらい、上場維持に務めるので、経済環境やマーケットの環境次第。(売却が)全くないと経営として意思決定しているわけではない。状況に応じた対応を取る」

■堀江「紙と通販の相性は良い」

――1500万人の会員の活用を重視するという話が強調されていたが、昨今、個人情報の活用の話が厳しくなっている。その中で、何らかの問題は発生しないのか。

 岡本「セシール本体もそうだが、我々もプライバシーマークを取得しているので、システム的な側面とモラル的な側面で常に教育はしている。さらに今後、強固なシステム投資をしていくので、よりリスクマネジメントを強固なものにしていきたい」

――セシールの株が急騰している。かなり売却益が発生しそうだ。なぜセシールの株が急騰しているのか。

 猪瀬「マーケットのことなので、知ってはいたが、マーケットの価格はマーケットが決めるので、我々はびっくりして見ていただけだ」

――紙媒体のカタログだが、中長期的に見たらどの程度の重要性があると思っているのか。

 堀江「紙は一覧性に優れていることだとか、写真のクオリティーが高いなどの利点がある。携帯電話と組み合わせると、QRコードを付けるなど、オーダーも容易だという特徴もある。なので、カタログがなくなるということは、私はあり得ないと思っている。ただ、今と同じ頻度で出すのかだとか、今の部数を維持するのか、あるいは増やすのかというところに関しては、今後の状況を見ながら考えていく方がいいのではないかと思っている」

 「繰り返しになるが、ネットが出てきても紙がなくなるわけではなく、ネットが有利な部分に関してはネットに流れていくのであろうし、紙が得意なところはそのまま残っていく。そういう状況は続いていく。以前、我々がネットスーパーのシステムを請け負っていたことがあるのだが、彼らはネットで当然、商品を検索できるのだが、同じように紙のカタログを各家庭に配っていて、そちらの方もかなり使われていたという実績もあった。我々の方ではDVDレンタルのポスレンというビジネスをやっているが、こちらの方も新着のDVDリストというのは紙媒体で『ポスレンナビゲーター』を季刊くらいで発行している。こちらの利用も結構多いということを考えると、紙とネットは今後も補完し合うのではないかと思う」

 「メディアとしてというよりは、イーコマースの部分ではそのようになってくるのではないか。既存の新聞も、私が思うに、通販媒体化しているように感じられる。特に、土日の新聞は半分くらいが通販の広告で占められているのではないかと思うくらいだ。紙というのは、通販との相性がいいということもあるので、今後も継続していくのではないかと思う」

 猪瀬「紙媒体については堀江氏と全く同意見だ」

■堀江「すべて友好的な買収になるとは限らない」

――このところの経営不振の1つに、ネットへの対応の遅れがあると思うが、振り返ってみて自力で(ネット通販を含めた再建)は無理だったのか。それともネットへのシフトが予想以上に早かったのか。

 猪瀬「いろんな政策をやっている中でも、年間数十万人の新規顧客を獲得しているのだが、それでもなおかつ、去っていくお客様も多い。今後の新しい世代となるネットやモバイルに親しんでいる世代を獲得していくには、ライブドアのお客様をセシールにどういう形で紹介していただくか。それは個人情報保護を十分に留意する必要があるが、その制限の中で、ライブドアのお客様に我々の商品を十分に見ていただくということは非常に重要だと考えている」

――ここ4〜5年を振り返り、今回の結果はやむを得なかったのか。もう少し早く動いていれば他の結果もあったと考えられるか。

 猪瀬「8〜9年前、セシールはカタログ通販の雄だった。売上高も2000億円あった。その時に、新しい媒体に注目し、人材などの資源を投入していれば、ほかの結果もあったのではないかという思いはある」

――TOBを行なう際、上場会社と資本提携するだとか、実効性のある業務提携をするには、相手との信頼関係の構築や事前の相談というのは必要だと考えるか。

 堀江「それはケースバイケースだろう。我々は敵対的TOBをやったことはない。すべて友好的なTOBだ。ライブドアマーケティングがやったバリュークリックジャパンもそうだ。ニッポン放送の株を買ったときは、TOBではなく、市場での買い付けをやっている。それでもニッポン放送の場合は50%超まで実際買えたわけなので、事実上、買収は成功したというように感じるし、それがそのあと株を手放して、フジサンケイグループとの友好的な業務提携ということに至っている。そういう意味では、さまざまなシチュエーションで使い分けるということが必要なのではないかと思う」

 「すべてが100%友好的に進むのかというと、そうではないケースも当然あるし、ある程度株を取得して、話し合いの場を持ってやるのもよし。最初からすべて話し合いでというのも『最初から買わないで下さい』ということであれば、意味がないということになる。もちろん、それは友好的にやれた方がいいのだが、それが無理なときは別の手法を用いることになると思う。我々はこれからも両方とも使い分けていく。成功率がどうかという問題があり、我々は今までさまざまなことをやってきたが、いわゆる買収に関して言うと、敵対的であろうと友好的であろうと、かなりの確率でうまくいっているのではないかと思う」

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