2003.5 無料公開記事 ネット販売2003.5

優良サイトの担当者が教える
ネット集客
現場に見る 使える集客術

事例研究1カグーshttp://www.kokugai.com/kagoo/


現在、ネット販売実施企業で最も重視するポイントの1つに新規ユーザーの取り込み、つまり“ネット集客”がある。ネットという媒体の特性上、新規ユーザーの開拓はイコール売り上げアップに結び付くからだ。従来、ネットでの新規開拓ツールとして隆盛を極めていたバナー広告はその効果を疑問視され、ここ数年で急激に普及し始めた効率的かつ低コストで一定の効果を生むアフィリエイト・プログラムやSEOなど新手法が脚光を浴び始めている。各新手法それぞれの効果や有効性については逐次、本誌でも述べてきたが、実際のネットサイトでは単独の集客手法ではなく、複数の手法を組み合わせ、集客強化を図っている。本連載では、優良ネット販売サイトの“ネット集客”の今をレポートする。

“グーグル対策”で1日2万人のアクセス、月商3,000万円を達成
「検索結果を上位に表示させる手法というのは特別、“専門技術”ではないと思います。自分でやればお金もかからないですし」――と話すのは弱冠、23歳で家具のネット販売サイトを運営するカグー(本社・千葉県香取郡)の花香公寿社長だ。営業を開始した02年1月から急激に売り上げを拡大。現時点の月商は約3,000万円と僅か1年という異例のスピードで家具単独サイトではトップをうかがう優良サイトに成長した。しかも、楽天市場やヤフーショッピングなど集客力のある仮想モールに属さずにだ。
この急激な売り上げ増の秘密はやはり、集客力にある。同社では“ネット集客”の手法としてオプトインメールやその他、様々な施策を行っているが、メーンは検索エンジン対策。1つはグーグルを意識したSEOと複数の検索エンジンへの登録だ。
「家具という商品の性質上、リピーターはほとんどいません。つまり、常に新規のお客様を獲得していかなければなりません」(花香社長)という点で目を付けたのが検索エンジン対策だった。
カグーの物販サイトのアクセス数の推移を見てみると株式会社化した02年9月の1日平均のアクセス数は約1,500人、10月で約3,000人、11月で約5,000人、12月では約1万5,000人に達し、現在は2万人オーバーという急激な伸びを見せている。
このアクセス増に比例して月商もアップ。9月時点で200万円、10月で400万円、11月には早くも1,000万円の大台に乗り、現在の3,000万円に至っている。
これは常に検索アルゴリズムの変化を注視しながら、日々、検索結果の上位ランクを図った結果で、それだけに検索エンジン対策が売り上げにいかに貢献しているかを如実に示した形となっている。

SEOの基本を抑えるだけで検索結果表示は“TOP10”に
では、カグーは検索エンジン対策として具体的に何を行っているのか。「単純といえば単純」という花香社長が言うように決して難しいことは行なっていない。SEOの基本とも言えるページランク(グーグル独自のウェブページ評価指標で検索結果の表示に大きな影響を与える)の向上策など 定石を抑えつつ、メーンの施策はグーグルの検索アルゴリズムで重要視されるタイトルとドアページの工夫だ。
これにより、特にベッド、ソファー関連のキーワードを打ち込み、検索すると並み居る競合サイトを押しのけて、同サイトが検索結果の上位に表示される結果を生んでいる。「よくアドワーズ広告などの営業電話がきますが、現状では全く必要ないですね」(花香社長)という。
本誌の熱心な読者であれば、説明は不要と思われるが、簡単に説明すると、ドアページとは特定の商品や関連するキーワードを意識的に最適化してグーグルなど特定の検索エンジンに認識してもらうための(テキストベースの)入り口ページのことだ。このドアページを作ることで、ユーザーが検索エンジンで特定の商品名やタイトルで検索を行った時にこのページが検索結果に表示され、アクセスに結び付くわけだ。
花香社長の言葉を借りれば「考え方としては検索に引っかかる窓口を広げるということなんですよね」ということだ。「例えば1,000ページ持っている大きなサイトでも全てのページのタイトルに同じ商品名を入れている方がいます。そうすると、その商品名しか検索対象になりませんよね」と続ける。
検索エンジンで例えば“ベッド”と検索すると、10万件以上の検索結果が出てくる。この“ベッド”というキーワードで検索結果の上位ランクは難しい。「ですから、ベッドはベッドでも例えば、“ベッド赤”とか“ベッド黒”とかそれぞれのページに違うタイトルをつけることによって、検索に引っかかる幅を広げていくんですね」(花香社長)。
通常、ウェブサイトはトップページ以下、いくつもの下層ページによって構成されている。カグーでは、それぞれのページのタイトルに2つと同じものはないという。例えば、「学習机」「輸入家具」「アジア家具」「パーソナルチェア」「ソファーベッド」「ベッドプリント化粧板」「ベッドポプラ木材」などだ。タイトルを各ページごとに変えることによって、“ベッド”だと競合サイトがひしめき、上位は望めないが、絞り込むことでそのキーワードで検索した場合は少なくともTOP10など上位に表示されるというわけだ。
実際、検索エンジン経由でカグーに入ってくる際、トップページからは全体の1割に過ぎず、後は各ドアページから入ってくるという。「やりすぎて、ある大手家具メーカーの企業名を打ち込んでも、うちのサイトが検索結果の一番上に来てしまっています」と花香社長は笑う。

常に上位ランクで、安心感も
このことは副次的に顧客の心理面にも作用し、コンバージョン向上を促している。カグーの顧客の中心は30〜40代のネットショッピングの経験が少ないいわば素人ユーザー。多少、経験のあるユーザーならば、何か商品をネットで買う場合、価格比較サイトや楽天市場など商品数の多いサイトも回ってみるはずだ。しかし、素人ユーザーの場合、検索エンジンのみを利用して目的の商品を探す場合が多い。
家具を買おうと様々なキーワードを入力して検索した結果、どんなキーワードを入力しても、同じサイトが上位にランクされていた場合、「あっ、このサイトは有名なんだな」と感じ、その結果、実購買に結び付く。
もちろん、カグーでも3,000点の商品数や商品の中には競合に負けない価格設定のものもある。ただ、取り立てて値段が安い訳ではない。「こうした心理的な安心感が大きく売り上げに貢献しているのは間違いないでしょうね」(同)という。

大手にはできない細かい施策も
これらグーグル対策をメーンにしつつ、同社では細かい施策も行っている。各検索エンジンへの登録だ。一定の売り上げが上がってきた02年11月時点でヤフーに有料登録を行ったほか、ルックスマートを初め、個人で作成しているものも含めて、1,000近くの検索エンジンに登録した。「自分のサイトのアクセスアップのため、個人的に検索エンジンを作っている人は世の中にうんざりするほどいます。ここが意外に盲点でした」(同)。
個人的な検索エンジンは当然、利用者も少ないため、1日に1人しか集客効果はないかも知れないが、逆に1日に1人でも1,000の検索エンジンに登録しておけば、確実に1,000人は新規ユーザーを拾える訳だ。「こんなに面倒くさいことは大手はやりませんからね」(同)という。
ここまで述べてきたことは、「本当に誰でもやろうと思えば簡単にできること」(同)だ。ただ、この当たり前のことを実行しているサイトはどのくらいあるだろうか。少なくとも、着実に実行しているカグーは家具というネット販売には不向きとされる商材で、現在も売り上げは拡大を続けており、従業員4人の小規模サイトの初年度(2003年8月期)売上高は約2億円と予想している。


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