2002.9 無料公開記事 ネット販売2002.9
今月のWeb人(9月号)
 
オルビス
 マーケティング本部
 マーケティング1・2・3部部長
 高谷成夫氏
 
〈経歴〉
1964年大阪府生まれ。
99年インターネットなど新規チャネルの開拓を行うマーケティング3部の課長に就任。2001年12月から、マーケティング1・2・3部の部長となり、現在に至る。

採算性をベースにネット戦略を構築

現在、約十万人の会員を抱え、月商3億円に迫る勢いをみせるなど、好調に推移するオルビス(本社・東京都品川区、春名敏弘社長)のインターネット販売。これを立ち上げたのが、今回登場する現在同社のマーケティング1・2・3部を管掌する高谷成夫マーケティング部長だ。
高谷氏は、99年8月のネット販売のスタート時、同部門を担当するマーケティング3部の課長(当時部長職は空席)に選任される。新規部門を預かる責任者として頭を悩ませたのが「ネット販売の採算性」。当初ネット単体で採算をとっていくのは難しいと判断していたためだ。

当初の評価軸はオーダーコストの削減

では何を評価基準にするか。高谷氏はネットを通販における受注形態の一つと位置付け、これによるコストダウンを評価軸とする。つまり当初ターゲットとしたのは、オルビスの既存顧客。当然将来的には、新規顧客獲得のチャネルとして期待していた訳だが、それを敢えて第1目標にはしなかった。
「普通ネットに取り組む狙いは、新しい顧客の獲得とか情報発信ということになる。しかし、それを頭に持ってくると結局結果を残せず、潰れてしまう」――。通販企業ならではの視点で、当初からネットに過度な期待をかけていなかったわけだ。ネットバブルに踊った多くのメーカー系企業のネット担当者には耳の痛い指摘かもしれないが、極めて現実的なアプローチであったといえる。

徹底したユーザビリティで、顧客に利便性を提案

既存顧客をターゲットとしたため、同社がサイト構築でこだわったのは、徹底したユーザビリティの強化。ネットは使いやすく便利ということを認めてもらわねばならない。
そのために、同社のサイトには立ち上げ当初から見えない工夫がさまざまに組み込まれている。例えば、サイトの軽さだ。
「ネットを使用してオーダーしていただけるお客様の多くは、家庭からの接続で回線が細い。これを考慮してなるべく軽く、シンプルにサイトを構築した」。また、リピートオーダーに備えて、一人一人の会員専用のサイトを構築、オーダーへの手間をなるべく少なくするなどのサービスもこうした考え方に基づくもの。
ユーザーの視点に立った細かい配慮が、現在のネット販売の好調を支えているといえるだろう。

ネット戦略は第2段階。さらに進化へ

現在、オルビスの通販部門におけるネットからの受注は12%強。目標の数字をクリアしている。
さらに同社のネット戦略は、第2段階に入った。コストダウンに加えて、ネットで新規顧客を獲得する手法が、確立されてきたからだ。これを踏まえ、今後は評価軸を違う形へと組みなおすという。
「ネットは、さらにメディアとしての性格が強くなってきており、テレビなど映像メディアに近づいてきた。クリエイティブを含め、ますます進化し、面白くなる」。取材の最後に高谷氏はネット販売の将来性をこう述べた。




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