2002.7 無料公開記事 ネット販売2002.7
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現実性のある売り上げ拡大策を打ち出せるか― 楽天
 
インタビュー 三木谷社長に聞く
 
―“課金逃れ”問題― 「はっきりとお引き取り願う」
 


――従量制課金の導入に伴い“課金逃れ”を行う店舗もあると聞いている。何店舗が行っているのか。また、これに対してどう対応していくのか。

 かなり少数だと認識している。
 課金逃れの1つに、楽天市場に出店している店舗で購入した商品をキャンセル扱いにする手法がある。サーバー上で商品がキャンセルされたことにすれば従量制課金として計上されないため、店舗側は課金を免れることができる。
 これに関しては、購入者に対して「あなたの購入した商品はキャンセルされました。もし、キャンセルされていないような場合は楽天市場までご一報ください」というような形にすることでモニタリングができるようになったので、これについてはほとんどなくなった。
 次にやる術は(出店舗の)自分のサイトに誘導するという方法。これに関してもガイドラインを作成した。
 ただ、その中で一番大きなポイントとして「楽天ゴールド」と呼ぶフリーページを使えるサービスの中でCGI(ウェブサーバがブラウザの要求に応じてプログラムを起動するための仕組み)が使えないという制限があったのだが、インフォシークが持っている「infoseek isweb」(アイエスウェブ)という機能を使うことによってCGIも使えるようになった。
 今までは外部リンクの禁止に反対する大きな理由として、楽天市場ではCGIが使えないことがあったのだが、実際には6−7月からはこれまで多少の譲歩を許していた購入ページへのリンクも禁止とする。
 しかし、実際的にはそれほど課金逃れがあるというわけではなく、具体的な数字で見ても5−10%も課金逃れを行っている店舗があるというわけではない。もっと小さい数字だと認識している。

――課金逃れが発生していることについてどうお考えか。また、なぜそういった事態が起こっていると見ているのか。

 基本的には楽天市場は出店者たちとのネットワークで成り立っている。今回の従量制課金の導入は、その売り上げの配分を受けてシステム投資などを強化して全体的にサービスを良くしていこうということが趣旨なのですが、そこに楽天のトラフィックだけを享受して5万円しか払わないという人が出てきた場合、かなり不公平になってしまう。
 そのため、売り上げが上がったら応分の負担はいただく。であれば楽天の方も同じ方向に向かって売り上げが上がるので機能を強化して、ますますその店舗にトラフィックを流していける。つまり、ベクトルを同じ方向に向けていけるということがポイントだ。
 はっきり申し上げると、これまで楽天では従量制課金をやっていなかったので楽天には(出店舗との)直接的な利害はなかった。しかし、今回から従量制課金を導入することで直接的な利害関係が生じるため、きちんとルールは守っていただくことになる。

――課金逃れは100%防ぐことが可能なのか。

 100%は無理だろう(笑)。ただ、楽天市場の店舗は6000店舗しかなくて、一人あたり200店舗と人員的にかなり監視をしているのでほとんどの課金逃れへの対策はできると考えている。

――販促メールを活用して自社サイトへ誘導するなど、モニタリングがしづらい形で課金逃れを展開されれば実態を掴むのがさらに難しくなってくるのではないか。

 そこまでくると、やろうと思えば何でもできると思うので最後は信頼関係だと考えている。インターネットビジネスはオークションにしてもそうだが、信頼関係がなければ成り立たないものだと考えている。
 逆に我々も出店舗がどういったメールを出しているか色々な形でモニタリングしているので、信頼関係のないところにおいては、事後的ではあるがお引き取りいただくことで対応していくことになるだろう。

――ただ、そのような監視体制が拡大・強化されていくと、出店舗側にとっては「常に監視されている」という心理的な圧迫を招き、居心地の悪いプラットフォームになってしまう可能性はないか。

 基本的にはルールを定めるので、それでも課金逃れを行おうという店舗があるのなら、これまでよりも“はっきりとお引き取り願う”ということをやっていくのは当然のことだ。


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