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従量制課金を本格導入。どうなる、基本路線転換の行方―  楽天

楽天(本社・東京都目黒区、三木谷浩史社長、URL:www. rakuten.co.jp)が一大転換を決断をした。従量制課金を含む新料金体系(図1参照)の本格導入だ。同社はこれまで月額5万円を基本とした出店料金体系で展開。“月額5万円”は楽天の代名詞とさえなっていたが、こうしたモデルを大幅に見直し、今後の発展を視野に入れた収益体質の改善を目指す。ただ、同社が運営する仮想モール「楽天市場」出店者には実質的な値上げとなるため、直接的な利害関係者間では様々な物議をかもしている。


“外部”からは高い評価

 新料金体系で大きな変更点となるのは売上金額に応じた従量制課金。月間100万円を超えた出店者に対し、4月1日から適用される。料率は2-3%。これによる新たな収益を売り上げ規模とトランザクションの拡大に伴う今後のシステム投資に充当していきたい考えだ。
 楽天の2001年12月期単独決算は、売上高が前期比67.7%増の51億8100万円。このうち出店料収入は約34億2970万円と全体の6割近くを占めるいわば楽天の“生命線”。しかし、これまでの従量制課金を伴わない料金体系では今後の成長面での期待が薄い。出店数の拡大が直接的な収益に結びつく事業モデルの一方で、出店数が頭打ちの状況だからだ(表1参照)。
 また、仮想モールとしての質的向上という面から考えても、新料金体系導入の意味は大きいと思われ、アナリストなど外部の新料金体系の本格導入に対する評価は高い。
 ウィット・キャピタル証券の藤岡清美アナリストは「常識的に考えれば今までの料金体系が大サービス。従量制課金への移行は当然の流れ」と評価。「月間100万円以上の売り上げの店舗は楽天への依存度が高いため、楽天のいうがままに動かざるを得ない」とするものの「シナジーはいい方向へ動くだろう」と見ている。
 ECサイトのコンサルティングを行うウィンアンドウィンネットの込山民子代表も「(新料金体系の導入で)さわいでいるのは売れていないショップ。売れているショップは当然のこととして極めてクールに受け止めている」としている。

楽天に依存しすぎると危険

 ただ、こうした外部評価の一方で、出店者の中には「楽天だけではダメ。ネット販売展開の入り口とリスクは分散すべき」(業界関係筋)との認識も広がっているようだ。今回の新料金体系は「非常にリーズナブル」(楽天・山田善久常務)なこともあり、出店者はある程度の理解を示している模様。しかし「今回の急な新料金体系の導入で、楽天に依存しすぎては危険だということが分かった」(業界関係筋)という声もある。
 また、もう1つ一部の出店者が楽天への高い依存度から脱却したいと考えるに至っているのは、外部リンクの禁止に象徴される“ワンストップサイト構想”の影響が大きい。これは「楽天市場に来れば受けられないサービスはない」という状況を作り出すことを目的としているのだが、出店者の中には「オープン性が高いインターネットの特徴に反する」と評価する声もある。業界関係筋によると、出店者の中には外部リンクが禁止されているにも関わらずメールにアドレスを添付して外部リンクができる仕掛けを行っている出店者も出てきているという。
 ワンストップサイトの構築を目指し提携買収を繰り返す楽天サイドと、楽天への依存度から脱却するためにも楽天以外のサービス活用を模索する出店者―。従量制課金の導入を一見クールに受け入れる出店者の中には、「楽天は一集客手法。それ以上でもそれ以下のものでもない。商売はネット上で行う」(通販業界関係者)と違った意味での“クール”な見方があるのも事実だ。

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