2001.11 無料公開記事 ネット販売2001.11
 
特集1 ネット広告を再考する
 
コラム
ネット販売の広告事例(2)


記事広告の有効活用で受注件数が8倍以上に  ベクター

 スポーツシューズやアパレルの卸と通販事業を行うベクター(本社・東京都豊島区、殿貝博之社長)。同社では広告記事企画を有効に活用、これにより受注数の大幅拡大と新規顧客の開拓に成功した。一般的な広告に比べると総じて高予算となる記事広告。だが適切なレスポンスを得ることでかえって費用以上の成果を得ることが出来る。ベクターの事例はそうしたことを物語っている。
 ベクターはもともとスポーツシューズなどの卸で事業を開始。昨年7月に雑誌広告とネットを利用して通販事業を開始した。同社は従来、日本には入ってこないようなモデルや、日本では入手不可能になってしまったモデルの調達で定評があった。買いつけは自社で直接行っている。だが、直接エンドユーザーの情報を入手できる点や、利益面などから、むしろ自社通販に注力することにしたのだ。
 とはいっても、通販の中でもネット販売を主体に考えている。雑誌に広告を出すのは、知名度を上げることと「信頼性の獲得が狙い」だと殿貝社長は説明する。むろん売り上げも上げたいがそれだけが目的ではない、というわけだ。このため、雑誌広告には大きくスペースをさき、自社サイトのアドレスを告知している。
 自社サイトは楽天に出店。常時40-50モデル程度を扱っており、色などを含めると取り扱い商品数は100点以上になる。さらに、1カ月に2-3回は米国からの入荷がある。このため、自社サイトではほぼ毎日、新商品をアップしている。
 中でも気を使っているのが写真。通常はデジタルカメラで撮影し、フォトショップを使ってホームページ用の映像にしていく。その際、ホームページに合うよう、画素数などの調整を行うほか、圧縮をかけることでできるだけサイトが重くならないように留意している。手間がかかるために1日にアップできる商品数は2-3点程度。それでもこうした細かい作業を重ねていかないとユーザーは満足しないという。
 当初は「ほとんど売れなかった」(殿貝氏)というが、昨年11月頃からは徐々に売り上げが拡大。さらに今年に入ってからは目に見えて数字が上がってきている。そうしたこともあり、ベクターではネット広告を利用したキャンペーンを展開することにした。

楽天の記事広告を利用

 利用したのは楽天が提供している記事広告商品の「ホットアイテム記事」。自社のプロモーションを十分にできるスペースを確保できるが、他の広告に比べると価格が高い。それでも、自社の意図を十分に伝えるには最適、と「ホットアイテム」を使うことにした。同広告を利用すると、楽天が顧客に配信しているメールの中でも告知を行ってくれるため、その効果も無視できないという考えもあったようだ。
 ネットでの広告は雑誌の場合とは違い、ある程度目玉商品だけに絞ってこれをインパクトある形で訴求することにした。スペースにゆとりはあるものの、その中で最も言いたいことに絞り込む方がユーザーにはより強く伝わると考えたからだ。例えば、ある人気アイテムについて、「他にないような割安感」(殿貝氏)を全面に打ち出すといった形だ。
 その結果、大きな反響を得た。最初の記事広告を出したのが今年7月。当時、1日の受注件数はおよそ20-30件といったところだ。ところが朝から次々とメールが舞い込み、同社が用意していたキャパシティーを超えるといった事態になり、慌てて対応に乗り出すといった一幕もあった。こうして初日だけで約170件の受注を獲得。通常の1日に比べると最大8倍近くに注文件数が上がったことになる。
 こうしたこともあり、同社では8月にも同様の記事広告を投入。ここでも成果を上げ、これにつれて全体の売り上げも急伸。今年9月についてみると昨年12月頃に比べてほぼ倍以上の月商になっている。記事広告により新規顧客を獲得したことも貢献していることはいうまでもない。
同社ではさらに拡販を積極化するため、10月からは新たな顧客管理システムを稼働開始する。過去の顧客の購買動向などを調べるためだ。同社の特徴はリピート率の高さ。全顧客のうち半数以上が2回以上注文しているのだという。さらにリピート率を上げるためには顧客の分析が不可欠と判断した。その上で、11月頃にはポイント制度も導入することにしている。

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