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Webトピックス
ADSL「Yahoo!BB」サービスイン―低価格・高速の理由


 9月1日、「Yahoo! BB」接続回線数4万回線からスタート―。ブロードバンド(広帯域)通信市場において、ここ数年の主戦場と目される高速インターネット接続サービス、ADSL(非対称デジタル加入者線)の“火つけ役”がついに本格始動した。回線工事などの遅れで、当初のサービスイン予定より1カ月遅れでのスタートだが、9月3日の時点で同サービスの予約者数は100万人を越す。
 続々と加入者が殺到する「Yahoo! BB」最大の魅力は、月額2280円という低価格設定にある。この影響は既存プロバイダー(インターネット接続業者)などにも波及しており、各社は値下げを余儀なくされている。これまで5000-6000円程度が一般的だったADSLだが、ヤフーはなぜこのような低価格設定が可能だったのだろうか。
 ヤフーは6月19日、ソフトバンクおよびグループ各社と合弁で設立したADSL事業などを行うビー・ビー・テクノロジーと提携し、ADSL事業に参入すると発表した。ADSLの接続関係はビー・ビー・テクノロジーが行い、デザイン・コンテンツ・集客などをヤフーが受け持つ。
 2280円という低価格もさることながら、関係者を驚かせたのは下りで最大8Mbps、上りで最大900kbpsというこれまでのADSLサービスの5倍以上の高速性だ。実は、この高速性が「Yahoo!BB」の低価格設定の理由ともなっている。
 これまで日本におけるADSL業者のほとんどは、「Annex C」と呼ばれるADSL方式を採用し、サービス提供していたという。これに対し、「Yahoo! BB」はアメリカや韓国などで多く使われているという「Annex A」方式を採用している。この2つの大きな違いは速度。「Annex C」方式は下りで最大1.5Mbpsとなっている。

ISDNが高速ADSLを阻害?

 単純比較しても速度的に不利な「Annex C」方式を日本のADSL事業者が選択していたのは、NTT東西が提供しているネット接続サービス「フレッツISDN」への影響を恐れたからではないかと、ヤフーは話す。これは基本的に両サービスは同一の通信回線を用いたサービスのため、双方に不具合が発生することを懸念していたことを意味する。しかしヤフーは「Annex A」方式でのADSL提供を実験した結果、「フレッツISDN」への影響の面で「ほとんど問題ない」(ヤフー)と判断。サービス提供に踏み切った。
 これにより、米国などで倒産したADSL業者が多くあることなどの影響で、ヤフーはADSLサービス提供に伴う必要資材を低価格で調達できたという。また、常時接続の実現で、現状、NTTの深夜電話料金サービス「テレホーダイ」の影響で深夜に集中していたアクセスが、時間帯を問わずに分散するのではないかと予測。ネット広告の価値が上がり、これが収益を支えるのではないかとも見ている。
 こうした経緯を経て、ADSLの低価格設定を実現し、ADSL全体の普及を後押しするのではないかと見られる「Yahoo! BB」。開始時点でのいくつかの目標には届かなかったものの、「常時接続」「高速通信」といったブロードバンド時代の電子商取引における重要なキーワードを普及させるべく、年内に100万ユーザーへのサービス提供を目指す。

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