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連載1 ネット限定商品 誕生秘話 第2回 | |
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時計メーカーのセイコーインスツルメンツ(SII=本社・千葉市美浜区、服部純一社長)は、セブンドリーム・ドットコム(本社・東京都港区、横山隆社長)のコミュニティサイトという“場”を借りることで、従来ではなかったような商品開発によるネット商品を誕生させている。 | |
“若い感性”を反映 もともとセブンドリーム・ドットコムが、登録制コミュニティサイト「欲しい!プロジェクト」と連携したネット商品開発を考えていたことが事の発端だ。少数・高単価のブランド開発を想定していたが、SIIの「若い感性を反映させたみんなの時計」(ウオッチ総合本部 企画開発部主任・高倉昭氏)という考えに惹かれたようだ。ユーザーの感覚的なコンセプトを集め、みんなが納得するものを目指す。商品単価も手ごろな5000円程度のものと考えていたという。そこでSIIに白羽の矢が立った。SIIは昨年8月に、同サイトと連携したネット商品開発に着手した。「欲しい!プロジェクト」のコミュニティと、同サイトのナビゲート役を務める金子里沙氏、SIIのウオッチ事業部・寺島かおり氏が中心になり商品開発を進めた。 基本的な進行は、同サイトの掲示板を通じてユーザーが欲しい時計のイメージを書き込み、窓口となる金子氏が意見をまとめ、寺島氏と商品化へ向けたすり合わせを行う形だ。金子氏の“アクセサリーみたいな時計が欲しいとしたら”という呼びかけでユーザーから声を募った。商品開発には「感性をかたちにすること」(同)を方向性としたという。 特に形に関するものなどの具体的な意見は排除した。方向性が異なる具体的な意見はまとめることができないことに加え、「若い感性を反映させたみんなの時計」というコンセプトからそれてしまうからだ。 「文字盤が目立っているもの」「凝った作りのもの」「飽きにくいデザイン」「シンプルなもの」「見やすい時計」「色のバリエーションは豊富に」「かわいいけど安っぽくない」など漠然とした声が集まった。金子氏がそれらの言葉から、「シンプルなものとはどんなものか」「カラフルなものとはどんなものか」というふうに噛み砕いて、イメージの共有化を進めた。 |
モデルを絵で見せながら商品化 SIIは「欲しい!プロジェクト」にリンクを張る形で、それらの意見を取り入れたデザインをアップするサイト「クリエーティブフォーラムネット」を立ち上げている。絵を見せながら商品化を進めることで、ユーザーとのやり取りを活性化させる狙いがあったようだ。金子氏が選んだ“感覚的な言葉”を基に、寺島氏がCGを使って商品モデルをデザインし、サイトに掲載した。また、そこで掲示板に寄せられた反応をベースに改良を加え、再び商品を提案するという形でデザインを絞り込んだ。9月下旬から10月上旬までに商品モデルは5回変えられた。 商品化までの約2カ月間に、掲示板にはトータルで300件近くの書き込みがあったが、例えば意見を積極的に出すユーザーを絞り込むことはしなかった。次に入ってきた声が面白ければ、その都度デザインに生かすというやり方をつらぬいた。 商品化は“みんなの時計”を意識したため、「性別にとらわれないユニセックス」(同)なデザインを指向した。ユーザーのデータ管理はセブンドリーム・ドットコムが行っていることもあり、SIIは特にユーザーの属性は意識しなかったようだ。「感覚的なみんなの時計という意味でも、ユーザーの属性は必要がない」(同)。 最終的なデザインが決定した後、10月初旬には投票という形で色のバリエーションが決められた。それぞれ12色を1セットに、肌の色に近い色が集められた「スキン」、派手な色を集めた「ビビッド」、薄い色を集めた「パステル」の3種類から200人が投票。若い女性の支持が強かった「スキン」のシリーズが商品化となった。 腕時計「アピタイム」の価格は4500円。11月にはセブンドリームドットコムで先行予約を開始し4000の注文を集めた。12月6日の発売開始以来、現在既に1万5000台以上を販売したという。 昨年12月の販売開始後、様々なバリエーションのカラーシリーズを販売している。第2弾として今年2月から男性向けに「ショコラ」シリーズ(3色)、6月からは第3弾の「カモ」シリーズ(8色)を展開。第1弾のシリーズでは女性の購入が多かったことから、2弾目以降では男性を意識したカラーシリーズを展開しているのだという。 |
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