2000.11 無料公開記事 ネット販売2000.11
 
〈インタビュー〉仏有力通販シリリュス――ジャン−ピエール・ワトー氏に聞く
 
 カタログ通販のような伝統的な小売業などの方が新興ベンチャーに比べてネット販売市場で有利、との声がここにきて聞かれるようになっている。米国ではこのことを指す「クリック・アンド・モルタル」といった言葉も聞かれ始めた。事情は欧州も同じようだ。有力アパレル通販・店販兼業企業でネット販売に早くから注目していたシリリュス(本社・フランス)の社長で今秋来日したジャン−ピエール・ワトー氏に現地の事情や同社のネット販売展開について聞いた。
(聞き手は本誌・筒井順子)


――御社のこれまでのネット販売事業展開を教えてください。

 当社はフランスにおけるEコマース(電子商取引)のパイオニアと自負しています。すでに1997年から1998年にかけて本格的なウェブサイトを構築、(シリリュスが扱っている)全製品を掲載しました。当時、フランスのほかの流通会社、通販会社はそこまでいっていませんでしたし、Eコマースをやっている企業でも一部の商品しか提供していませんでした。
 基本的には全世界からのアクセスに対応できるようになっており、進出国に1つのサイトのほか全世界をカバーする英語とフランス語のサイトを持っています。現在のサイトは第2世代ですが、今年の10月末までには第3世代のサイトが稼動開始します。すでに頭の中には第4世代(のサイト)まで構想がありますよ(笑)。

――どういった点に開発のポイントを置いているのですか。

 情報提供や注文処理などにおける迅速さ・簡便さです。

――ずいぶん早い時期にネット販売を本格化させたようですが、最初は業界から“ちょっと変わり者”のように思われませんでしたか。

 当時、ネットに関心を寄せていたところが多くなかったことは確かです。当社の場合は顧客層を見ると比較的高学歴、高収入であり、言ってみればアッパークラスの人が多いという事情があります。そうした点からネットは顧客層に合うと思っていました。実際、当社の顧客のうち40〜45%の人が何らかの形でネットにアクセスできる環境にあります。

――ですが、フランスではミニテル(同国独自のオンラインサービスのこと)が大変に普及しているため、ネット自体が浸透するのに時間がかかるとの指摘もあります。

 確かにそうした面はありましたが、ここにきて周囲でもネットへの進出に積極的なところは増えています。

――確かに、フランスでもネット販売ベンチャーが増えていると聞きます。

 そうですが、ベンチャー企業の問題点はやはり物流です。当社のような通販実施企業はすでにそうした面でインフラやノウハウを備えており、有利だといえます。

――最近、米アマゾン・ドット・コムがフランス市場への本格参入を発表しましたが、うまくいくと思いますか。米企業のフランス進出はとかく難しさがあると思いますが。

 フランスにも有力なネット販売実施企業が出てきています。例えば(シリリュスの親会社筋に当たる)仏プランタングループにはフナックという書籍などの販売会社があります。同社はネットでの展開を本格化しており、すでに経験も顧客層も持ち、フナック・ドット・コムと名称を変えたほどです。こうしたフランス企業が市場の中心となっていくでしょう。むろん、アマゾンも一定のところまではシェアを確保できる可能性はあると思います。

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