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株式アナリストに聞く、楽天の評価 | |
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楽天の株価が“続落”、投資家の目が厳しくなり始めている。一連の動きは7月に入ってからのことだが、それ以前の5月、 同社株について「売り」のレポートを発表、株式市場で注目を集めたアナリストがいる。ウィット・キャピタル証券調査部 の荒木正人氏だ(当初の株価は「下値目処に近づいた」として、楽天株の評価は8月初旬の段階では「保有」に変更している)。 楽天が運営するモールの構造的な問題を指摘する同氏に話を聞いた。(聞き手は本誌・縄田昌弘) | |
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また、商品の登録及び更新のたびに出店者側が電話回線でRMSにつなぎ、作業を行わなくてはならない点も課題です。例えばあるモールでは、1日に数回あるデータベース更新時間に合わせてファイル転送で作業を済ますことができます。 楽天の場合、出店企業数が数百店の時は、例えば1時間に30、40アイテムの登録作業が行えたのですが、2,000〜3,000店以上という規模になると、1時間の処理量が3アイテムだとか、そもそも非常につながりづらい、といった問題が起きてきます。楽天では8月から18億円程度をかけてサーバーを増強するといっているようなので、混雑は解消される方向だと見ています。ただ、肝心のバックオフィスとの連動については解消しないでしょう。それは各店舗でやって下さい、我々はウェブのフロント部分だけをお貸しします、というのが楽天の基本スタンスです。 モールの最大の魅力はもともと、店舗の集積による集客効果だと思います。しかし、やみくもに増えれば消費者は目当ての店を探しづらい、店舗側も露出度が減る、ページビューの分配が大きく偏る、といったことになるわけです。 ある大手ポータル運営企業の場合、モールの部分では出店企業数をある程度もう制限し、各店舗に儲けてもらう代わりに自分たちもマージンを得ることで収益を上げたい、という方向性を明確にしています。これは楽天とは正反対のスタンスだといえるでしょう。出店料が月額の固定費用で5万円だから安い、という打ち出し方はもはや古くなってきたとすらいえます。 |
――荒木さんは独自取材の結果、楽天出店企業の半数以上がほぼゼロに近い、と主張されているが。 楽天サイドにぶつけたところ、半数まではいかないといっていました。4割程度かな、というイメージです。ある出店者によれば、年2回の(楽天主催の)パーティーに行くと、そのたびに顔ぶれがすっかり変わっているといいます。他の有力モールに関しても、取材をしてみると、やはり半数程度が(売り上げ)ゼロだということです。楽天には各店舗をフォローするECコンサルタントと呼ばれるスタッフがいますが、店舗が増えすぎているので、手が回っていないとの指摘もあるようです。私が5月に楽天に取材をした時には、(その時点では)新規出店を少し抑え、出店から3ヵ月〜半年程度の既存店舗を中心に売り上げアップに力を入れるとの話もありました。 もっとも、出店企業にとっての1番のサービスはアクセス数をさらに増やし、出店数を制限することだと思います。コンサルタントがついたり、売れる方法を教えることで、何かが劇的に変わるというわけではありません。どれだけ(各店舗の)露出を助けてあげるかだと思います。 ――現状の3,600店舗強は飽和点を超えているように感じるが・・・。 とっくに過ぎていると思います。とはいえ楽天にとって現状は問題ありません。出店者側でも月額5万円を特に高いと思わなければ、まだまだ出店数自体は増えていくのでしょう。月額5万円ならまあいいか、という店舗が多ければ、当面、誰にとっても問題はないわけです。ただ、永続的に出店が増えるのは難しいだろうし、増えれば増えるほどモールが混み合うというジレンマがあります。出店企業は基本的には1年間出店を続ける義務があり、まあ半年すれば違約金を払って撤退する手もありますが、既に退店待ちの企業が少なくないとも聞きます。――退店の水準はどの程度と考えるか。 私の聞いている感じでは10%程度あってもおかしくないと思います。当面は店舗数が増えていくのでしょうが、ある段階、例えば今年の秋だとか来年早々にその勢いが衰えていく可能性はあると思います。その意味では5月の時点でセル(売り)を前提としたレポートを書いたのは少々時期が早かったのかもしれません(笑)。――現時点(7月)では楽天に対して中立のアナリストが大多数というお話だが、いずれにせよこれだけはっきりセル(売り)の立場に立ったのは珍しい。 それはバイ(買い)のレポートを書いたほうが楽ですよ。企業側からもニコニコされるし(笑)。ただ、セルのレポートを書いて、予想以上の反響がありました。マスコミだけではなく、モールのシステム構築をしていらっしゃる企業さんからも問い合わせがありました。――楽天の株価推移をどう見ているのか。妥当な株価とは思えないが。 楽天が今後どこまで業績を伸ばすのか、調達資金である約500億円に見合う収益規模に育つのかは見物だと思います。本来、投資家の満足を得られないのであれば、株価は下がるべきものです。ただ、最初の段階で(株価を)上げすぎたので、それはある意味では証券会社や投資家の責任だとも思います。 今、私が株価予測レンジのボトムを400万〜410万円程度にしているのは、せいぜい公募価格までのレベルでしょう、ということです。むろん株価は業績だけを正確に反映するというものではないので、そこは何ともいえませんが、少なくとも現状のPER(株価収益率)が楽天の今後の長期的な右肩成長を前提とするのであれば、それはこれまで申し上げてきたような理由から、かなり無理があるのではないか、ということです。(本誌注・インタビューの収録は7月17日だったが、実際にはその後、楽天の株価は大きく変動。また、今号の締め切りは楽天の第2四半期決算発表直後となり、その部分は文中に織り込まれていない。こうしたことから、荒木氏には次号で再度、直近の業績を前提として改めて話を伺うことにする) |
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